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GABA受容体の機能調節機構の解明

研究

 

医歯学系(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔生化学分野)照沼 美穂 教授

照沼 美穂 教授

医歯学系(新潟大学大学院
医歯学総合研究科 口腔生化学分野)

Profile

博士(歯学)。
専門は神経化学、神経生物学、生化学、
神経薬理学。

神経細胞に発現するGABA受容体の役割を様々な脳の部位で解析・研究

脳は興奮性と抑制性、2種類の神経伝達でバランスを保ち機能する。GABA受容体とは脳をつかさどる重要な受容体。照沼美穂教授は、この神経細胞に発現するGABA受容体の役割を様々な脳の部位で解析、研究を進めている。
「歯学部というと口腔のみを研究対象にする印象があるかもしれませんが、私のように中枢神経を専門にする研究者もいます。GABA受容体はイオンチャネル型GABAA受容体と代謝型のGABAB受容体に分けられます。それらの発現がどういったシグナルを受けて調節されているかを、培養細胞や遺伝子改変マウスなどを使って調べています」
食欲に関わる満腹や空腹などの感覚は脳の視床下部での働きによって生じている。それらに関連するのもこのGABA受容体だ。
「食べ物を“美味しい”と感じる気持ちは、五感で感じた様々なインプットが神経細胞を伝わり、脳に届くことで起こります。しかし、GABA受容体の抑制が高まった場合、“美味しい” という感情を長期記憶することができなくなることが研究を通して分かっています」
このように脳と口腔の関係は非常に密接だ。また、GABA受容体は薬のターゲットとしても注目されている。

GABA受容体の種類と構造
GABA受容体の種類と構造
GABAB受容体の活性が高いマウス(S783Aマウス)は長期空間記憶形成に障害がある
GABAB受容体の活性が高いマウス(S783Aマウス)は長期空間記憶形成に障害がある

「新薬開発には受容体がどのように動いているのかを理解することが重要です。そのメカニズムを理解することによって特異的な症状に効果的な薬剤開発に貢献できるのです。特にGABA受容体はアルコール依存症や精神疾患などと関連して調べられています。アルコール依存症の患者に対してGABA受容体の興奮性を抑えても効果はありません。一方の抑制性を高めることで症状が緩和されることが分かりました。受容体そのものの研究はまだまだ未知の領域が多いのですが、私たちの基礎研究が形になることで、薬物やアルコール依存を抑制することができる可能性が高まります。このように歯学部の特色をいかして、口腔機能と脳機能の連関について、さらなる研究を進めていきたいと考えています」

照沼教授の研究アプローチと手法
照沼教授の研究アプローチと手法

 

六花 第25号(2018.SUMMER)掲載

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