Birds Note 5月18日
自然放鳥したトキの3ペアから自然界では36年ぶりに誕生したひなが7羽となり、順調に成長しているという嬉しいニュースが、連日報道されている。餌不足や天敵に襲われることなく、順調に成長して巣立ちの日を迎えてほしいと願う。
トキの野生復帰は環境省が進める国家プロジェクトであるが、鳥類学者として協力されているのが、山階鳥類研究所名誉所長であり、本学特任教授を務める山岸哲先生だ。山岸先生は、この分野では世界的に著名な学者であるが、最近、信濃毎日新聞社出版の著書「Birds Note(バーズ ノート)野生の不思議を追いかけて」を上梓された。
本書は山岸先生が綴るエッセー集である。研究者の視点とユーモアに溢れた珠玉の短編と、養老孟司氏やリュック・ジャケ氏との興味ある対談コラムもある。
プロローグでは、著者が小学校4年生の時に、コバルト・ブルー色のムクドリの卵を見つけ、その美しさに惹かれ、鳥の卵集に駆り立てられ、知らず知らずのうちに鳥の生態に好奇心を覚えるようになったとの先生の生い立ち(オシドリは浮気をしないのか・中央公論新社)が「まえがきにかえて」として紹介。つづいて、1)よみがえれ野生のいのち―絶滅と復活をめぐって(絶滅万歳/ 信州へ、トキとコウノトリがやってきた ほか)、2)したたかな野生のいのち―行動生態学の見方から(ハーレム男/ 息子か、娘か ほか)3)野生のいのちいつまでも―これからの研究の姿(レッド・データブックは常に見直せ/ 絶滅危惧種の保全目標を明確に ほか)/ 対談コラム(対談・鳥よ、虫よ、人よ!(養老孟司×山岸哲)/ 対談・「皇帝ペンギンを語る」(リュック・ジャケ×山岸哲) ほか)となっている。
絶滅から野生復帰したトキやコウノトリのたくましい姿や、「私のモズは一夫一妻」、「鳥たちの失楽園」、「精子窃盗罪」など、トリ社会と人間社会の一端をユーモラスに紹介、興味が尽きない話題がリズムよく書かれている。私は、最後まで惹きつけられつつ、一気に楽しく読ませていただいた。
巻末には、2011年までの「トキとコウノトリの野生復帰への道のり比較年表」がまとめられているが,この年表に、2012年、放鳥トキのひな誕生が新たに記載されることになる。
山岸先生がおっしゃるには、トキを日本の自然の中に復活することは、私たちが失ってしまった鳥を、もう一度取り戻すことにまず意義があるが、しかし決してそれだけではない。トキが野外で生きていけるということは、そこに十分の餌があることであり、営巣する場所が存在することである。トキを放鳥することの意義は、トキが生息していける環境全体を守ることであり、それは、私たちが失いつつある里地里山の生物多様性や生態系を再生することである。すなわち、トキの再生は、地域社会の再生に繋げるものだとの新たな信念で、本学の朱鷺・自然再生学研究センター長として山岸先生にはリーダーシップを発揮していただいている。私どもは先生と一体となって未来を拓いていきたい。
Back From the Brink 5月9日
佐渡市で、4月22日、自然放鳥した3歳雄と2歳雌のペアから、自然界では36年ぶりとなるひな3羽が誕生した。
これとは別のペアで、新たにひな2羽が誕生し、今季誕生したひなは2組のペアで計5羽となった。新潟大学の研究者がペアの巣を望遠鏡で観察したところ、5月8日午後2時50分ごろ、巣の中で同時に2羽が確認されたという。この親鳥となったトキは、5歳の雄と3歳の雌のペアで、4月2日に営巣、同5日に抱卵が認められ、今月5日にひな1羽が確認されていた。この嬉しいニュースは
“SCIENCE” 4 MAY 2012 VOL 336 P524の“NEWS OF THE WEEK: AROUND THE WORLD”(PDF:1.04MB) 欄に、“Back From the Brink”として、本学の朱鷺・自然再生学研究センター長である山岸 哲教授の以下のコメントとともに世界の科学者に紹介された。
“SCIENCE” 4 MAY 2012 VOL 336 より抜粋
Japan went gaga last week when three crested ibis chicks pecked through their shells in a nest on Sado Island and became the first of their species born in the wild in the country in 36 years.
“We've learned a lot about captive breeding, preparing birds for release, and how to monitor them,” says Satoshi Yamagishi, an ornithologist at Niigata University in Japan who heads a Ministry of the Environment task force on reestablishing the birds in the wild.
He expects their experience to benefit breeding-and-release programs for other species. “we would like to see a second generation born in the wild and a stable population,” Yamagishi says.
佐渡市で放鳥された、国の特別天然記念物トキから、新たにひな5羽が誕生したことになるが、ひなたちが順調に成長し、無事巣立ち、大きく羽ばたいてほしいと願うばかりである。
「シニアアドバイザー委嘱状交付式」 5月8日
本学に於ける「科学研究シニアアドバイザー」の委嘱状交付式を、松風会館第1会議室(五十嵐地区)及び統合脳機能研究センター6F(旭町地区)にて執り行った。本学では、科学研究シニアアドバイザー制度を4年前(平成20年度)から導入している。シニアアドバイザーの委嘱は、本学の研究力の向上を目指し、アドバイザーの先生に、様々な活動を通して科学研究支援をお願いするものである。
今年度の「科学研究シニアアドバイザー」として、学内の教授・准教授のなかから、五十嵐地区では57人、旭町地区では44人の計101人に委嘱状を交付させていただいた。その顔ぶれをみると、科研費の審査経験者、科研費採択の実績が顕著な方々で、まさに本学の研究をリードし、研究の柱になっている方々である。
本学の科研採択実績でみると、本制度を導入した平成20年度以後今年度まで右肩上がりの増加をみており、採択件数は6割も増加した。これらの成果はシニアアドバイザーの皆さんのご協力をいただいていることが大きな要因であると感謝申し上げたい。本学の教育研究力の向上のために、シニアアドバイザーの皆さんには、今後も本学の発展へのご尽力をお願いした次第である。交付式後の懇談会において、シニアアドバイザーの皆さんの抱負をお聞きして、本学の高い活力を確信することができた。