脳梗塞治療を飛躍的に向上できる糸口を発見!

 新潟大学脳研究所神経内科の下畑 享良准教授を中心とする研究グループ(金澤雅人医師ら)は,脳梗塞の治療で,現在,最も有効とされる血栓溶解療法の弱点とされる合併症(脳出血)が,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)というタンパク質が引き金となって生じることを,世界ではじめて明らかにしました。
 本研究成果は新潟大学脳研究所の統合脳機能研究センター,病理学分野との共同研究です。

○ 学術論文名

Inhibition of VEGF signaling pathway attenuates hemorrhage after tPA treatment
「VEGFシグナル阻害はtPAによる血栓溶解療法後の脳出血を抑制する」

<研究概要>

 脳卒中は本邦での死因の第3位を占め,このうち,血管が詰まることで発症する脳梗塞は,近年増加し,後遺症に苦しむ患者も多く,治療にかかる医療費は増加の一途をたどっている。

1) 「組織プラスミノゲン・アクチベーター(tPA)」を用いた血栓溶解療法は,血管に閉塞した血栓を溶かし血液の流れを再開するため最も有効な治療法である。しかし,治療可能時間が3時間以内と極めて短く,脳梗塞患者の5%未満しか治療の恩恵を受けられない。
2) これは,発症後,時間が経過すると,脳の神経細胞だけでなく血管にも障害が起こり,血管が破れやすくなり,脳出血を生じやすくなるためである。
3) 研究グループは,ヒトの脳梗塞に病態が類似したラット脳塞栓モデルを用いて,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)というタンパク質がtPA療法後の血管の障害や脳出血の引き金となっていることを世界ではじめて明らかにした。
4) さらに,近年,臨床応用が進められている抗体医薬,および受容体抑制薬をtPAとともに静脈に注射しVEGFの働きを阻害したところ,治療後の脳出血は抑制され,治療可能時間も延長できることを明らかにした。

<本研究成果のポイント>

 4)の薬剤をtPAとともに使用することで,治療可能時間を延長できることとなり,これにより,

   tPAによる血栓溶解療法の実施数の拡大
副作用である脳出血をおこす患者の減少による予後の改善
後遺症を残して介護が必要となる患者数の減少と医療費増大の抑制
などに繋がることが期待できる!

<画像イメージ>

 tPAによる血栓溶解療法後のラットの脳内の血管に発現するVEGF(赤)

 このVEGFというタンパク質が,脳の血管を破れやすくしてしまう。
 抗体医薬と阻害剤はVEGFを抑え,血管が破れることを抑制する。

 緑:血管をつくる細胞

 青:血管をつくる細胞の核








<参考>

● 本研究成果が実際の治療に反映された場合に,予想される延長時間
1. 対象患者の概算数(まず脳卒中の疫学から)
1) 全患者数はがん患者よりも多く,約150万人
2) 年間,新たに約50万人の人が脳卒中になる。
3) 年間死亡者数は約13万人
4) 脳卒中のうち,血管が詰まる脳梗塞が最も種類として多く,全体の約70~80%(約120万人)
2. 血栓溶解療法(tPA)の治療頻度等(tPA治療時間と治療適応の頻度)
現在,発症3時間以内を対処可能としているが,実態としては発症2時間以内でないと治療が間に合わないため,実際にtPA治療が行われる頻度は脳梗塞全体の5%未満(2~3%とする報告が多い)
3. 今回,発見した成果が治療に反映された場合の効果
正確な治療可能時間の延長時間はヒトにおける臨床試験で確認する必要があるが,「発症6時間から8時間まで延長することができる」のではないかと考えている。

<研究成果の公表>

 これらの研究成果は、2011年2月9日の米国学術誌『Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism *』に掲載されました。
 * 脳循環,代謝,イメージングについて実験,理論,臨床各方面からの新しい情報を提供している国際脳循環代謝学会の学会誌。 関連する分野は、神経学、神経化学、生理学、薬理学、麻酔学、神経放射線学、神経外科学、神経病理学、神経科学全般

230210_脳梗塞治療を飛躍的に向上できる糸口を発見!
特色ある研究と研究支援制度
産学連携の推進
研究者プロフィール
知的財産の創出と保護
国際交流の推進
担当窓口はこちらです