新潟大学 超域学術院

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研究成果

異分野連携を介した内耳特殊体液の物性の生理的意義の解明 日比野浩教授

《背景と目的》

 難聴はヒトの日常生活を著しく損ねます。現在、我が国では、1千万人を超える人々が、この病気に苦しんでいますが、その有効な治療法は十分に確立していません。我々は、難聴の克服を目指して、医学の基礎研究を行っています。外界からの音は、耳の奥にある内耳の蝸牛という臓器の感覚細胞に、ナノレベルの振動を発生させます。その結果、電気信号が発生し、音の情報が脳へと伝えられます。この過程には、「内リンパ液」と呼ばれる特殊な体液と感覚細胞との間のコミュニケーションが極めて重要です。
 本プロジェクトでは、内リンパ液に着目し、その物理的な特性と感覚細胞の振動現象の関係を調べることで、音が聴こえるメカニズムを解き明かします。さらに、この関係が崩れたモデル動物を作製して分析することで、難聴の原因を探究します。工学や数理学の第一線の科学者と連携し、新しい計測機器の創出やコンピューターシミュレーションの活用を進めることで、今までにない視点から独創的な研究を展開しています。成果は、難聴の病因の解明や治療法の開発に貢献すると期待されます。



《二年間の成果の代表例》

①新たな断層イメージング装置の基盤技術の開発 研究を進める上で、さまざまな条件下において感覚細胞の振動現象を捉える必要があります。しかし、この振動は、ナノレベルと微小であり、かつ高速であるため、従来の計測技術では正確に測定することが困難でした。そこで、最先端の光源である「光コム」を駆使して、感覚細胞の振動現象を立体的に描出するための基礎技術を開発しました(Opt Commun 356C:343-349, 2015; Opt Express 23:21078-21089, 2015)。今後は、微調整を繰り返し、生体計測を実行していく予定にしています。

②内リンパ液の物性を調節する候補タンパク質の同定 血管条と呼ばれる上皮組織により維持される内リンパ液には、物性の制御に関わる糖鎖が含まれていると想定されています。糖鎖は多彩なタンパク質に付着します。血管条から、質量分析法を用いて、糖鎖をタンパク質に付ける酵素を25種類、糖鎖を外す酵素を16種類、見出しました(Eur J Neurosci 42:1984-2002, 2015)。これらの酵素の詳しい分布や働きを丹念に調べ、内リンパ液の物性との関係を明らかにしていくことを計画しています。

③内リンパ液のイオン環境を調節する仕組みの解明 感覚細胞が振動すると、内リンパ液からイオンが流入します。その結果、細胞が興奮し、脳で音を感知することができるようになります。したがって、内リンパ液のイオン環境を整える仕組みの理解は、この体液と感覚細胞のコミュニケーションに重要です。さらに、ある種の糖鎖の物性は、イオン環境の変化により変化することも知られていますので、糖鎖を含む内リンパ液の性質もイオンの影響を受けるかもしれません。そこで、内リンパ液を維持する血管条に焦点を当て、どのようにイオンが運ばれるかの一端を、特殊な微小電極を駆使して明らかにしました(Pflügers Arch 467:1577-1589, 2015; J Physiol 591:4459-4472, 2013)。この仕組みが破綻したときに、感覚細胞の振動がどのように障害されるかなどを観測し、難聴との関係の解明につなげていこうと考えています。

 ◆尚、本プロジェクトの一部は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の平成27年度「革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)」の支援を受けことになりました。
http://www.niigata-u.ac.jp/top/pickup/271127_01.html
http://www.amed.go.jp/news/program/010720150608_kettei_kadai01.html

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