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2017年2月 学長メッセージ

2017年2月学長メッセージ

目次

タイトルをクリックすると該当のメッセージにジャンプします。

1.はじめに

キーワード:理念「自律と創生」、10年先を見据えた改革、未来への道をともに築く

2.これまでの3年間を振り返って

(1)3年間の所感

キーワード:3年目の発芽、サポーター倶楽部、まなび応援基金、若手との交流会

(2)真の強さを学ぶ。 -教育改革の核心-

キーワード:タグライン「真の強さを学ぶ。」、教職大学院、理系3学部改組、新たな「創生学部」

(3)次世代の研究を生み出す -若手中心の異分野研究の活性化-

キーワード:異分野融合サロン、若手教員への研究奨励

(4)地域社会と国際社会をつなぐ -社会連携と国際協働の接点-

キーワード:日本海側地域から国際社会へ、産官金学協働、リエゾンプロフェッサー

3.10年先に本学が在るべき座標 -環東アジア地域の知の拠点として-

(1)100年先の未来は、次の10年先の将来から

キーワード:100年先の未来、10年間のビジョン、6年間の基本戦略

(2-1)歴史ある総合大学の持つ地力を発揮する

キーワード:地方国立大学グループトップ、世界大学ランキング、指定国立大学法人

(2-2)自学のことだけではなく地方国立大学をけん引する

キーワード:地方創生の中核、地方国立大学の地位確立、研究面の中間層への支援、地方から声を上げる

4.超えていくべき課題への挑戦 -真の改革に向けて-

(1)困難を直視する

キーワード:山積する課題、自ら課題を直視、冷静な検証から課題克服への挑戦

(2)未来へと向かう教育改革 -最大のミッション-

キーワード:近未来の学び、成果を全学に広げる、全国のモデルとなる、社会人向けプログラムへ応用する、10年間の最大のミッション

(3)次世代人材の活躍のために -新たなリーダーと新たな形態-

キーワード:若手の研究リーダーの獲得・育成、研究組織の根本の捉え直し、超高齢社会の課題先進国、脳・神経科学から統合的な健康科学へ

(4)環東アジア地域の拠点への成長 -平和と発展への寄与-

キーワード:環東アジア地域拠点構想、北東アジアから世界全域へ、国際関係の俯瞰、当地域の安定に貢献、地域の国際化を担う中核人材の育成

(5)ガバナンスの発揮 -次世代の経営・企画人材への期待-

キーワード:経営力の強化、大学間の協働と役割分担、事務職員と専門的人材の活躍への期待

5.おわりに -ともに築く未来への道-

 

 

学長メッセージ

1.はじめに

新潟大学長 髙橋姿です。
2017年という新たな年を迎え早くも1か月となりました。本年は、新潟大学にとって37年ぶりの新たな学部がスタートする重要な節目の年です。そして私自身は、この2月より就任4年目に入り、任期4年間を総括する年を迎えたことになります。

私たち新潟大学は、世界に開かれた海港都市新潟、日本海側ラインの中心新潟に位置する大学として、恵まれた環境の中で伝統を育みつつ総合大学へと発展してきた歴史があります。そして、全学の基本理念に「自律と創生」を掲げ、教育、研究及び社会貢献を通じて、世界の平和と発展に寄与することに邁進してきました。地域から日本全国、更には世界を見据え、時代をけん引する人材を育成し、社会へと輩出することに何より注力してきました。

この基本理念のもと揺るぎない教育研究に責任を担うことはもちろん、同時に、めまぐるしく変遷する現代社会において、常に次の10年先を見据えて不断の改革に努めることも重要性を増してきました。

そこでこの機に、これまでの3年間を振り返りつつ、この先々に新潟大学がどのような存在を目指し、何のためにどのような改革を行うのか、本学の教職員と、学外から本学を支えていただいている皆様方に改めて伝え、未来の新潟大学へとつながる道を皆様とともに築きたい、との思いをこの度メッセージとして発信することにいたしました。

(新潟大学の理念についてはこちら

2.これまでの3年間を振り返って

(1)3年間の所感

これまでの任期3年間を振り返ると、教育面、研究面、社会貢献面のいずれも3年目の昨年、平成28年に顕在化しつつあります。
就任1年目の地ならしに始まり、改革の種蒔き、そして昨年度の発芽と、3年かけてようやく目に見えるものが育ってきた手応えを感じています。率直に言ってまだまだこれからという取り組みもありますが、根気よく様々な工夫と飽くなき努力を続けて行きたいと思っています。

これまで私自身が強く意識してきたこととして、大学の殻に閉じこもらないで、社会との対話を心掛ける姿勢があります。地域社会はもちろん、国内外の人々や社会に対して絶えず情報発信し、新潟大学の存在とその活動を伝えること、大学の中に社会における考え方を取り入れること、大学と社会との協働や連携活動を活性化すること等です。
その一環として、平成28年3月に「新潟大学サポーター倶楽部」を設立し、ご賛同いただいた企業・個人の方々に入会いただき、力強いご支援をいただいております。
また、今年度には「新潟大学まなび応援基金」を創設し、経済的に修学困難な学生の支援にご寄附を使わせていただいております。
この場を借りて御礼申し上げます。

さて、このように社会とともにあるという基本認識と具体的な行動、そして広報活動は、本学のみならず地方国立大学に共通する死活的な重要事項であり、現在、新潟大学長であり国立大学協会副会長の任にもある立場として、率先して取り組むべき主要な役割の1つと考えています。
それとともに、まさに大学の将来を担う若手の教職員にも絶えず目を向けています。新たに設けた学内全部局の若手との定期交流会は、私自身にも新たな発見・学びがあり、新鮮な気持ちにさせてもらえる有意義な時間となっています。

(新潟大学の情報発信全般については、こちらのトップページからどうぞ)
(「新潟大学サポーター俱楽部」報告会・情報交換会開催の様子はこちら

(2)真の強さを学ぶ。 -教育改革の核心-

教育においては、常に時代の先進となる教育プログラムを用意し、知識基盤社会に対応可能な、タフでありしなやかでもある真の強さを持ち、人生の課題に立ち向うことができる新潟大学生らしい人材の育成に取り組んでいます。このことから、我々の使命と意志を凝縮した本学タグライン「真の強さを学ぶ。」を昨年5月に制定し、自ら学ぶすべての人たちに対する我々からのメッセージをこれに託しました。

(タグラインについてはこちら

この3年間の改革の取り組みも形となってきました。
昨年4月には、学校現場でのリーダーとなるべき教員を育成する教職大学院をスタートさせました。本年4月からは、理系3学部の理学部、工学部、農学部もそれぞれを1学科に改組し、従来の学科を超えた教育プログラムを用意しました。理学部と農学部をまたぐフィールド科学人材育成プログラムは生態学や災害科学などを学ぶことができます。

同じく本年4月には、本学では37年ぶりの新学部「創生学部」を開設いたします。創生学部とは、学生自らが自らを創生する学部という意味をその名に持ち、本学の基本理念である「自律と創生」を全面的に体現した到達目標創生型の学部です。
22パッケージの文系・理系にわたる専門領域が用意され、学生が自ら選択して科目を学びますが、そこで身につく力はコミュニケーション能力、発想力・企画力・実行力、語学力やデータ分析力等の実践的なスキルであり、まさに真の強さを学ぶにふさわしい本学を代表する学部へと育てていきたいと考えています。

(教職大学院のオリジナルサイトはこちら
(平成29年4月に新設・改組する学部についてはこちら
(創生学部が国立大学協会主催の論説委員等との懇談会に参加した様子はこちら

(3)次世代の研究を生み出す -若手中心の異分野研究の活性化-

グローバル化の進展によるめまぐるしい社会変化の中で、世界中の大学・研究機関との競争が激化した今日の研究では、個々の研究者による専門分野に特化した研究だけに留まらず、異なる分野間での横断的・融合的な研究が求められています。つまり今までになかった新研究領域の創出です。

従来は、それぞれの研究者が分野内でのみ研究を進め、異分野間の意見交換や共同研究が大学全体でも本当にわずかでした。総合大学である本学の強みを生かしきれておらず、実にもったいない状況でした。そこで、異分野間の取り組みを実質化することこそが、課題であり将来の道を広げるチャンスという認識を強めていました。

昨年12月に、多様な領域を専門とする様々な分野交流の場として、本学URA(注)の発想力・尽力もあり、第1回「U-goサロン」(異分野融合サロン)を開催しました。若手の研究者達の最先端の研究が、講演・ポスターセッションで発表され、活発な意見交換が展開されました。その中で具体的な共同研究の話も芽生えています。こうした取り組みの継続が新たな発想を呼び、新研究領域の一層の創出につながっていく期待が膨らんでいます。
(注)URA(リサーチ・アドミニストレーター):大学の研究者・教員と共に研究の活性化・高度化を支える包括的な支援活動を行う専門的人材

また、将来の学術研究を担う優秀な若手研究者の育成及び研究意欲の向上を図ることを目的として、学長賞(若手教員研究奨励)を平成26年度に創設し、若手研究者を毎年顕彰するとともに研究奨励費を付与しています。そして、顕彰した若手の多くがこの奨励費をもとに、大型の公的研究費の採択につながる新進の研究を展開し、付与した奨励費以上の資金獲得にもつながる好循環も始まっています。

(「U-goサロン」開催の様子はこちら
(今年度の学長賞(若手教員研究奨励)の授賞式の様子はこちら

(4)地域社会と国際社会をつなぐ -社会連携と国際協働の接点-

本学は日本海側に立地し、対岸の東アジア世界を眺望できる大規模総合大学という特性を持っています。このことを深く自覚し、地域貢献及び強み・特色ある分野の課題に重点的に取り組む大学を目指しています。

新潟県内はもちろん、広く日本海側に共通する高齢化や人口減少等の困難な課題解決への貢献によって地域社会における知の拠点としての役割を積極的に果たすことは本学の使命です。同時に国際社会においては、高齢化、環境、エネルギー、食糧生産、感染症等、様々な要因で共通する課題がありますが、そこに本学の特性を発揮して、日本海対岸の東アジア社会を基点としながら、国際関係を俯瞰したネットワークを広げてゆきます。

県内地域の産業、金融、行政各機関に参画していただき、産金官学協働による地域の国際化にも対応できる中核人材の養成と地域定着の促進を図ります。
この3年間で長期インターンシップを特長とした学外学修に力を入れており、平成28年度からは経済同友会と複数大学が連携して行う長期インターンシップにも参加しました。
昨年10月には、産金官学の更なる交流から共同研究の活性化等を目指した「新大産学交流フェスタ」を本学中央図書館で開催しました。企業や自治体等の関係者が多数参加したなか交流を深め、新たな共同研究のアイデアも生まれました。更には、大手総合企業と包括契約を結び、旧来にはない産学連携活動も進みつつあります。
こうした積み重ねが地域企業等の国際競争力を強めることにもつながり、本学と企業の間にWin-Win(ウイン-ウイン)の関係が構築されていくことに期待を込めています。

(経済同友会との連携によるインターンシップ成果報告会開催の様子はこちら
(「新大産学交流フェスタ~活力あふれる新潟へ!~」開催の様子はこちら

また、国際協働に関して平成28年度には、本学卒業生など海外の大学等に勤務する外国人教員・研究者で本学の国際交流に大きく貢献されている方々に「リエゾンプロフェッサー」の名称を付与し、国際ネットワークの更なる発展にご協力いただくこととなりました。
先日1月16日に、本学の国際ネットワークの構築と強化に関する議論のため来学いただいて「新潟大学リエゾンプロフェッサー・アセンブリー」を開催し、リエゾンプロフェッサーの方々から積極的な提案を頂いています。

(リエゾンプロフェッサー・アセンブリー開催の様子はこちら

3.10年先に本学が在るべき座標 -環東アジア地域の知の拠点として-

(1)100年先の未来は、次の10年先の将来から

私個人の目標を超え、新潟大学の理想そして使命は、日本海地域の現在の世代がすべて交代した先の時代、100年ののちにも地域社会から国際社会まで貢献することでしょう。
その100年先の新潟大学が在るべき姿を目指すため、今まさに新潟大学長という職にある身として、より近い将来である次の10年先に在るべき座標を示し、そこまでの道筋をつけることが責務であると考えています。

そのため、本学の基本理念である「自律と創生」を体現する、おおよそ10年にわたる中期的なビジョンを「姿デザイン~環東アジア地域を基点に世界を見据えて」に表し、その実現に向けた約6年間の中期的戦略を「将来展開に向けた機能強化基本戦略」と「中期経営基本戦略」で明らかにしました。
また、地域社会への貢献、医療人養成への貢献をはじめ、本学医歯学総合病院の担っている役割はとても大きく、多岐にわたっています。その6年間のとるべき方向性を「新大病院グランドデザイン2016-2021」で明らかにしました。
これらのビジョン、基本戦略等のもと、本学全体の意志によって不断の改革に取り組み、一つずつ着実にビジョンを現実のものとしていきます。そのためにも10年先に在るべき座標として、まず次の2つを明らかにしたいと思います。

(ビジョン、基本戦略についてはこちら
(新大病院グランドデザインは、医歯学総合病院オリジナルサイト内のこちら

(2-1)歴史ある総合大学の持つ地力を発揮する

第一に、教育・研究・社会貢献の総合力を発揮し、国立大学法人運営費交付金の重点支援の枠組みで、「地域活性化と強み・特色ある教育研究分野を推進する国立大学」を選んだ重点支援Ⅰグループ55校における目に見える確固たる地歩を築きます。

具体的には、平成28年度は55校中10番目、平成29年度は同7番目であった評価結果でしたが、グループ内のトップを目指して常時上位1割である5番以内の獲得維持を目標に設定するとともに、「海外のトップ大学と伍して全学的に教育研究を推進する国立大学」を選んだいわゆる旧帝国大学を含む重点支援Ⅲグループとも肩を並べる大学を目指します。
その目安となる、近年注目を集めているTHE世界大学ランキングでは、現在601-800のグループですが、将来的に3ランク上の351-400以上を狙っていきます。その達成に向け、1つずつランクを向上させていきます。そのためにも、教育、研究、国際協働、社会連携の各項目にわたって着実に実績を積み重ね、その成果を積極的に発信していきます。

このことにも関連して一つ申し上げますと、世界最高水準を目指す国立大学群を指定する制度として最近法律で定められた指定国立大学法人には、本学は現在、人材育成・獲得、研究力、国際協働、社会連携、等々の複数の水準で及んでいません。しかし、そこで求められている指標は、いずれもこれからの在るべき大学像を考えた上で重要なものです。
もちろんランキングがすべてではありませんが、学外の方々にとって最も分かりやすい参考情報となることもまた確かです。その認識をもちつつ、あと一歩の項目、まったく及ばない項目等について、本学の現状を十分に検証し参考にしながら、効果的に総合力を高めていきたいと考えています。

(2-2)自学のことだけではなく地方国立大学をけん引する

第二に、重点支援Ⅰを選んだグループを中心とする地方国立大学をけん引する立場によって、重点支援Ⅲを選んだグループとは異なる道のりから、改革の成果を着実に積み重ね、地方国立大学だからこそ実現できる大学改革のモデルとなります。

前述のとおり総合力を上げていく工夫・努力は惜しみませんが、それでもなお自助努力では及ばない部分が当然出てきます。これはむしろ本学の課題に留まるものではなく、国立大学協会副会長の経験から、他の地方国立大学の学長の方々のお話を聞く機会が増え、共通する切実な問題として、それまで以上に強く実感している問題意識でもあります。

そこで例えば、指定国立大学法人の地方版あるいは教育版の制度創設といった何らかの対策の重要性について政府関係者や一般社会の理解を求め、地方創生の中核的役割を担うべき地方国立大学の地位確立に貢献していきたいと考えています。
また、研究面でもトップ層だけでなく、小規模でも特色・個性を有するトップに準ずる層への支援の重要性について声をあげていきたいと考えています。

4.超えていくべき課題への挑戦 -真の改革に向けて-

(1)困難を直視する

さて、このように申し上げてきましたが、その実現には乗り越えるべき課題が山積しています。前述の指定国立大学法人の要件を例に出すならば、本学は研究力の科学研究費助成事業では辛うじて適合するものの、論文の数や質では遠く及びません。社会との連携も、受託・共同研究や寄附金、特許権収入が、また国際協働も国際共著論文、留学生及び日本人派遣学生でも、複数の水準で及ばないのが現実です。

本学が置かれているこの状況を前にして、うろたえたり消沈したりしてはいられません。現実逃避や落ち込んでいるぜいたくな時間をもつ余裕は、我々にはないのです。
それよりも、自らの強み・弱み、周辺環境から見た利点・不利な点、等々を冷静に検証し、作戦を立てて、情熱を持って粘り強く課題に立ち向かい、そして克服する。その挑戦にこそ時間とエネルギーを使う方がよほど建設的です。
そこで、先ほどの座標に到達するための課題への取り組み姿勢を次に明らかにします。

(2)未来へと向かう教育改革 -最大のミッション-

本学の強みである教育においては、しっかりとした基礎に支えられた専門知識を生かして課題発見・解決力を備える人材の育成、教育プログラムにおいて実現すべき共通の視点としての汎用的能力の具備を全学の改革の中で実現します。

中でも、近未来の学びのあるべき姿を現すべく新設した「創生学部」を中心に、学生が自律的に学修し自己を創生する教学のノウハウを積み重ね、その成果を学内に拡大し、教育プログラムを的確に評価する仕組みと学生自らが学修成果の振り返りを行う仕組みとを効果的に組み合わせる基盤を着実に築いていきます。それを大学院の教育プログラムへと反映させていくこと、これらにより全国の教育モデルとして教育改革をけん引することが、新潟大学のここ10年間の最大のミッションだと考えています。

また、これらの能力の養成は、知識基盤社会である現在においてこそ重要だと感じています。さらには社会人向けの教育プログラムへの応用にまで至ってこそ、将来長きにわたる本学の宝になるのではないか、と先々の展開へ期待を抱いています。

(3)次世代人材の活躍のために -新たなリーダーと新たな形態-

次に研究力強化においては、学内外の優れた研究者連携による新たな分野の創出を伴う共同研究を開拓します。そのためにも突出して優れた若手研究者を研究分野の新たなリーダーとして獲得・育成しなくてはなりません。

全学の研究組織の従来からのあり方も考え直していかねばなりません。超高齢社会への突入については日本が世界の課題先進国ですが、関連して健康寿命の延長はいずれ国際的な課題となります。本学を代表する研究組織である脳研究所を中心に、脳科学・神経科学から全学へと広がる統合的な健康科学の研究拠点として、近未来を見据え、どのような存在へと進んでいくべきか、本学だけに留まらない大きな課題として、国際的な拠点への成長に至るまでのロードマップを明らかにしていきます。

新たな研究課題はもちろんですが、新たな研究実施の体勢にも挑戦し開拓していきます。
本学では、遺伝子・ゲノムデータや医療情報等のビッグデータの解析をはじめとする産学官連携による先端的な共同研究の試みも始まっています。このような取り組みを学内外のモデルとして実績を上げていくことで、新たな研究領域の開拓のみならず、新潟県をはじめ高齢化が進む地域社会にも、国際競争力を持った企業による新産業の創出に貢献できます。

また、全学の教員人事組織のあり方そのものを検証して、これまでの硬直的なやり方を見直し、教員個人の専門性と組織としての柔軟性を両立することにより、分野横断的・融合的な研究の創生のための編成がより効果的に行えるように改めていきます。

いずれの課題も10年先の発展のためには今年が大事です。それぞれの組織の根本の捉え直し、また、産学官連携による共同研究への対応等、次世代へとつなげるための方向性を具体的に定めることとします。

(4)環東アジア地域の拠点への成長 -平和と発展への寄与-

国際協働では本学の特性を最大限に活かし、基本戦略である環東アジア地域拠点の構想に沿って、対岸の北東アジアつまりロシア(極東・シベリア)、中国本土、台湾、朝鮮半島、モンゴルから、ASEAN諸国を含む東アジア全域、さらに、豪州、インド等へと環を広げていき、世界全域へと展開して行きたいと思います。

今から約2年をかけて、環東アジアに関する全学的な研究センターの新設を進めてまいります。これにより、北東アジアから環東アジア全域へ、文化・歴史、政治・経済、医学・医療、産業技術等のグローバルな課題提起と解決への提言を軸に、行政・企業・他研究機関等々の多様なニーズに応えられるシンクタンク機能を強化してゆきます。

そのためには、特定地域の研究の深化はもちろん、地域をまたがり、しばしばそれを超えて域外を含む国際関係を全体俯瞰した視点から課題に臨むことが要請されます。これにより複合的な能力が求められる等、研究者個人へ高い要求が課されるとともに、複数の研究者による取り組みは必須となり、学外者との共同研究が活性化していくものと考えています。

本学は基本理念で世界の平和と発展への寄与を掲げており、「科学者の行動指針」において軍事への寄与を目的とする研究は行わない旨を定めています。
このことにも関連して少し申し添えますと、様々な意見があり国立大学協会においても一様ではないところですが、私としましては、基本理念の実践という意義を有することはもちろん、北東アジアから世界全域へと国際協働を活発化させていく中で安全保障リスクにかかる有形無形のコスト負担を考慮すると管理運営上も必要な指針だと考えているところです。
そして何よりも、平和と発展への寄与には、地域の安定に貢献していく姿勢が重要であると思っております。

さて、これらの取り組みの最大の成果として狙うのは、大学院を中心とした人材育成への反映です。環東アジア地域を基点とした複雑なグローバル環境の中で活躍できる人材の輩出を通じて、地域社会の国際化を担う中核人材の増加に貢献します。

上述のシンクタンク機能の発揮と、この中核人材の輩出の両輪によって、県内はもちろん日本海側の広域にわたる地域社会とのプラットフォームの一翼を確実に担い続けます。
こうして社会へ成果を還元する力を一層高め、10年先には、新潟の地から環東アジア地域へ、環東アジア地域から新潟の地へと双方向の還流を生み出す、一大拠点の形成を目指します。

(日露ビジネス対話で髙橋学長がプレゼンテーションを行った様子はこちら
(「科学者の行動指針」についてはこちら
(地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)の特設サイトはこちら

(5)ガバナンスの発揮 -次世代の経営・企画人材への期待-

(経営力の強化)
このように課題が山積する一方にありながらも、何もかにもすべてに力を入れて頑張りますと、安易に言えない時代でもあります。これらの教育、研究、社会貢献の改革の実質化には、大学経営におけるガバナンスの発揮、並びに財務基盤の強化が必須です。

平成16年の国立大学法人化以来、国からの運営費交付金は減少の一途をたどってきました。法人化から13年目となり、それ以前より1割以上が削減された状況においては、人的・物的・資金・情報といった学内資源を効果的に組み合わせて配分し活用する機能を強めていく必要があります。そのために、産学官連携による共同研究活動の強化等の様々な収入増加方法の確保を含めた経営基盤の構造改革を断行し、リーダーシップに基づく戦略性のある将来に向けた配分の仕組みを活用するとともに、客観的指標に基づくPDCA運営サイクルを確立していきます。

同時に、経営力の質向上には、学長を中心とした経営に関する意思決定の支援のため、本部体制を充実する適材適所の配置が必要です。私自身が苦労した経験からも言えますが、次世代・次々世代を担う経営・企画人材の育成が何よりも肝心で、今のうちから進めなくてはなりません。

(大学間の協働と役割分担とを見据えて)
国内外の他大学や研究機関などと、強み・弱みを相互に補完し合いながら、共同の教育研究の連携を深め、それぞれの役割分担を考えていかねばならない時代が来たと思っています。

新潟県内にはそれぞれに特性を持つ3校の国立大学があります。
この地理的条件を活かして、例えば本学と長岡技術科学大学との大学間連携による、新たな医工の分野間連携の開拓等、さまざまに試みております。目線を変え工夫をこらして知恵を出し、他の国立2大学、更には近隣の公私立大学とも力を合わせていけば、総合大学が持つ地力を発揮できるシーズ(種)はまだまだあるはずだと思っています。

日本海側地域の中心に位置する国立の大規模総合大学として、本学が引き続き担っていく守るべきものは守り、活用できるものは最大限活かしつつも、改めるべきものはしっかりと改める姿勢を一層明らかにしていきます。

(事務職員と専門的人材の活躍への期待)
最後になりますが、これまで述べてきた大学の真の改革には、教員を主体とする行動だけでは達成不可能であり、事務職員とURA等の専門的な人材の活躍が必須です。

事務職員そして専門的人材の方々には、その経験の多様さや教員にはない得意分野を生かし、教員と協働する姿勢をより強くして、積極的に大学改革に資する企画提案を行っていただきたいと思います。その潜在力の発揮に強く期待します。
あわせて、教員の方々にも事務職員と専門的人材の意見を真摯に受け止め、尊重しながら、ともに取り組む姿勢を積極的に示すよう求めます。

もちろん、本学だけで解決できない課題も多くあります。例えば、事務職員の役割に関する法制度上の改正等がまさにそうです。そういった課題については、国立大学協会全体の取組みとして取り上げていくべきテーマとして、私自身積極的に対応してまいります。

5.おわりに -ともに築く未来への道-

ここまでさまざまに申し上げてきました。

この先いくつもの困難がありますが、ただ座して待つだけなのはかえって苦しいだけです。まだ見ぬ新潟大学の100年先の未来に向けて、今この時ここで皆様のお力を貸していただけませんか。

私たちの手で、未来へと続く道をひらく10年先の将来をともに築いてゆきましょう。

2017年 2月
新潟大学長 髙橋 姿