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超音波による物質量子科学研究の展開と社会への還元

大学院自然科学研究科 物質量子科学研究センター 教授 後藤 輝孝 研究グループ

自然科学研究科、物質量子科学研究センターの後藤輝孝教授らの研究グループでは、世界最高水準の基礎研究を推進するための文部科学省特別推進研究「電荷揺らぎに由来する強相関量子相の研究」(平成18~22年度、研究代表:後藤輝孝教授)が発足しています。※特別推進研究は、文部科学省科学研究の中の最高峰で、平成20年現在86件のみが認定されています。
このプロジェクトでは、物質の中に極めて多数存在する電子や原子が、お互いに強い影響を及ぼし合うときにできる特殊な量子状態を、世界でも類を見ない超音波を駆使して実験的に明らかにすることを目的としています。
身近な例ではシリコンの研究があげられます。シリコンは私たちが普段何気なく使っているパソコンや携帯電話、音楽プレーヤー、USBメモリーなど現代社会になくてはならない機器に使われる半導体デバイスの原料です。私たちの研究グループではシリコン結晶を低温に冷却し、その硬さを精密に測定することで、シリコン結晶中に存在する原子空孔(原子の穴)の観測に世界で初めて成功し、その濃度を測定できる装置を開発しました。この発見は15年にも及ぶ基礎研究の成果が応用へ結びついた貴重な実例として新聞や雑誌などにも多数報道されました。半導体の微細化が20ナノメートルに達するとともに、結晶欠陥の問題が改めて表面化しています。物理の基礎研究に裏付けされた私たちの開発した技術を応用することで、シリコンウェーハやメモリーチップの高性能化と歩留まり向上につながる画期的な成果と言えます。

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超音波計測法を用いた極低温強磁場環境でのシリコン単結晶の弾性定数測定の様子。
右の青色の装置が超伝導磁石を装備した希釈冷凍機(最低温度10mK、最高磁場9T)。

この研究を基にして、経済産業省のナノエレクトロニクスプロジェクト(平成19~23年度、研究代表:後藤輝孝教授)や大学発ベンチャー事業(平成20~22年度、研究代表:金田寛特任教授)も同時に発足し、新潟大学、コバレントマテリアル社、東芝セミコンダクター社が三位一体となって実用化を目指しています。このような低温実験を支援するために、平成16年度にヘリウム液化機と液化窒素の安定供給体制が整備されました。これは物質量子科学研究センターの低温室によって運営されており、新潟大学の基盤設備となっています。詳しくは毎年発行されているセンターだよりやホームページ(http://www.gs.niigata-u.ac.jp/~cqms/)をご覧ください。