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【学長対談第2回】富士ゼロックス顧問 日比谷様との対談

2016年06月08日 水曜日 学長メッセージ

新潟大学では,全学の理念にある「自律と創生」の実現に向けて,社会の変容と価値観の変化に対応しながら環境の構築と改革を行ってきました。
そして,平成29年4月には到達目標創生型の新しい教育プログラム「創生学部(仮称)」の新設や,理・工・農学部の改組などを計画し,社会が求める人材育成を進めています。

「国立大学に期待する人材育成」をテーマに,経済同友会会員でもある富士ゼロックス株式会社顧問の日比谷 武 様と髙橋 姿学長が富士ゼロックス株式会社の研究・開発・生産拠点である富士ゼロックスR&Dスクエア,お客様価値創造センター(神奈川県横浜市西区みなとみらい)にて対談を行いました。

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日比谷 武 様(右)と髙橋 姿 学長(左)

髙橋学長 本日はお忙しいところお付き合いいただきありがとうございます。日比谷さんは経済同友会の「学校と経営者の交流活動推進委員会」の委員長を務められていらっしゃる関係で,生徒や学生と接する機会が多いと聞いていますが,どんなお話をなさっていますか。

日比谷様 そうですね。いろいろありますが,よく「企業ってなんだ?」という話をします。学生に「企業で一番大事なのは?」と聞くと「利益」という答えが返ってくることが多いですね。もちろん利益は大切ですが,その利益はどうやって生まれるのでしょうか。これは「信頼」です。企業というのは「価値を創造するもの」であり,価値を創造するから対価をいただくことができる。「日本の課題ってなんですか?」という話もよくしますね。財政面での課題,少子高齢化や地方創生,環境問題や資源の枯渇など・・・いろいろな意見交換をする中で,最終的には「Think Globally. Act Locally.」(地球規模で考えよう,足元から行動しよう)といったところへ話が進みます。

-教育の一環としてのインターンシップ-

髙橋学長 企業の方とそういった機会を持つことが刺激になり,学ぶ意欲の向上にもつながると思います。そういった機会の一つとして,低年次でのインターンシップという取組みは効果があると考えていますがいかがでしょうか。

日比谷様 おっしゃるとおりだと思います。
早いうちにインターンシップで職場体験すると,少しかもしれないが企業等を,見て,感じて,世の中のながれ,課題,潮流が身近になり物事を考えられる。働くってそういうことなんだということを,なるべく早くから考えることが意味のあることだと,最近ますます確信してきています。

髙橋学長 そうですね。私が期待するのは「教育の一環」であるインターンシップです。今日的な問題として,高校生から大学生への転換を支援するための教育が重要であるといわれています。大学では,学びに対する熱い気持ちがないと,自ら課題を探して挑んでいくことができません。そのきっかけの一つとしてインターンシップには期待しています。学生にとってすごいインパクトがあると思っています。

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日比谷様 インターンシップを単なる就職のHow Toとして捉えるのではなく,企業も大学も学長が言われた意義を理解すべきだと思います。大学時代に何を学び続けるべきかの気づきの場として,1・2年生の早い段階で経験する事は大切だと思います。経済同友会も今年から,新潟大学を始め11の大学と実践しています。

髙橋学長 企業の若い社員の方が、自分の反省を踏まえて,学生に「今こんなことを考えるべき」,「こんなことを学ぶべき」などの貴重なアドバイスがもらえるといいですね。インターンシップで刺激を受けた学生が,周りの友人にその経験を語る。友人も経験はしないけど,そんな機会が貴重であることは理解できます。次に友人がインターンシップへ行き,同じような刺激を受けてくる。そして後輩にも伝える。いろんな学生が影響を受けて,キャンパスの雰囲気は変わっていくと素晴らしいと思います。
受け入れる企業にとっては大変かと思いますが,この取り組みで育つ人材は,社会のニーズに合致する人材となる可能性が高いサムシングを持った人材。その企業に直接メリットが必ずしもあるわけではないかもしれないが,社会には確実にメリットとなります。

-産業界が求める人材とは―

日比谷様 端的にいえば,「自ら考え,自ら行動する人」ですね。具体的にいうと1つは思考力です。組織で怖いのは思考が停止する状態になること。例えば,企業文化も変わっていくと思いますが富士ゼロックスは何を大切にしているのかということをローカルの随所で考えて,お客様に価値を提供していく人です。2つ目は実践力です。評論家は必要ありません。企業の競争力の源泉は「人」と「企業文化」です。

髙橋学長 新潟大学は,「自律と創生」を全学の理念に掲げ,自分で物事を考えられるような人材を育成しています。新潟という土地柄もあるのかもしれませんが,まじめでおとなしいが粘り強く取り組む学生が多いように感じます。

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日比谷様 最近の学生はコミュニケーション力があり,SNSなどからの情報発信力もある。ただ,「いいね仲間」や「お友達」ばかりで固まっているような気がします。そうじゃない違った意見をもって集まっているのであれば素晴らしいと思いますね。

髙橋学長 そうですね。私が学生時代だった時のように「肝胆相照らす」ようなところが少ないような気がします。昔は議論し出して大喧嘩になることもありました(笑)。議論を戦わせることは大切ですが,今の時代,それがいじめや仲間はずれにつながることもあり注意しなければなりません。

日比谷様 よく3年で新入社員の3割が離職するという話がありますが,入社してすぐ見切るのではなくて,忍耐というか,少しお説教っぽくなりますが,勤労観というか,そういうものを繰り返し考えていくのもいいし,組織というもの,地域というものを良くしていこうと考えて行動することもいいと思います。苦しいけど課題を共有して解決する喜び,得られる自己満足。他者からの感謝などが生まれてくるといいですね。従業員満足(ES)なくして顧客満足(CS)はありません。

-新しい教育プログラムを展開する「創生学部」の新設について―

髙橋学長 新潟大学の機能強化基本戦略では,新潟大学型質保証による学位プログラムの推進の一環で,学生自らが学びの目標を定め学修をプロデュースする「創生学部」を平成29年4月から開設する予定で準備を進めています。今ほど日比谷さんが言われた産業界が求める人材である「自ら考え,自ら行動する人」を輩出する教育プログラムを展開します。

日比谷様 事前に資料を拝見しました。とても魅力的に感じますね。こんな素晴らしい教育プログラムの実行と継続には,担当する先生の負担が大きいと思いますし,教員と学生の間に入る事務職員の意識改革も必要であると思います。広報も大切ですね。このディプロマポリシーを,情熱を持ってこなしていけるモチベーションの高い高校生たちに伝えなければなりません。

髙橋学長 創生学部開設に伴って,新たに専任教員を8人採用する予定です。その他にも専門教育である「領域学修科目パッケージ」を提供する6学部からも専任教員を迎えます。フィールドスタディーズ(校外学習)やインターンシップなどで社会の方々からも参画があってよいと考えています。

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日比谷様 生涯学習の意味である、教えることは学ぶことです。社会人が教えることで、新しい学びの方法も生まれると思います。新設される創生学部に期待します。

-グローバル化の進展について―

髙橋学長 私は,入学式や卒業式でよくグローバルについて話します。世界を相手に仕事をしなさいというのではなく,例えば新潟にいても,海外にいても地球規模で物事を考えられる広い視野をもつこと大切であり,世界の座標軸の中で自分はどのポイントにいるのかそれを考えることが大事だと思っています。

日比谷様 富士ゼロックスでは,創業数年後には韓国やタイに進出しました。それぞれの国のローカルな資本(現地企業)と連携し,企業活動を行ってきました。基幹人材を育成するため,有望な人材を国際大学(新潟県南魚沼市)へ行かせMBAを習得させたり,海外の優秀な人材を日本に呼び寄せ,徹底的に教育したりする取組みを行ってきました。ある時期からその制度を進化させ,現地の優良な教育を受けた優秀な人材を採用し,ローカルの人材にグローバルな視野を持って主体的に活動してもらうことを進めています。

髙橋学長 先ほど,本学の卒業生で総務部長さん(本学S59卒業)が十数年間信州にいて,それからタイで5年9カ月活躍してきたとの話を聞き,非常にうれしく思いました。信州で仕事をしていてもローカルでなく,発想はグローバルで広い視野を持って行動してこられてきたのでしょう。だから苦労は多かったと思いますが,ちゃんと適応でき,成果をあげられたのだと思います。

日比谷様 グローバルな人材というと英語力が連想されます。英語で人を感動させるようなレベルにはなかなか達しませんが,ビジネス英語あたりはマスターしておきたいところです。英語力を高めるためには,母語の語彙力や教養に裏打ちされた常識力が必要であると実感しています。その場の状況を見極める力,文化を理解した常識力などがないと相手の信頼を勝ち取ることはできません。

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-リーダーシップについて―

髙橋学長 人材育成・イノベーションの拠点として,大学が教育研究機能を最大限に発揮していくためには,学長のリーダーシップの下で,戦略的な大学運営が求められています。コーポレート・ガバナンスが大学ガバナンスを整理する面で大いに参考になると考えていますが,企業におけるリーダーシップについてどのようにお考えですか。

日比谷様 経済同友会でお世話になった北城恪太郎さん(元日本IBM社長),川村隆さん(日立製作所相談役)や,代表幹事を務めた小林(故 小林 陽太郎様(富士ゼロックス元会長))から学んだことですが,企業のトップに必要なことは4つあります。1つは,正しい認識を歴史観・大局観に基づいて判断すること,2つ目は,判断軸の基礎となる教養,人間としてやってはいけないことを認識すること,3つ目は,アカウンタビリティ。なぜ,なんのためにやるのかということを丁寧に,時間をかけて関係者と対話する,4つ目は,断固実行です。
そんな中でリーダーシップを発揮して物事にあたるための知識の収集は非常に重要です。
なんで小林があんなに尊敬されるのかなと考えると,ベースとしてヒューマニティがあり,現場の人を大切にして,真摯にコミュニケーションをとっていたことかなと思います。

髙橋学長 私も,丁寧な対話やコミュニケーションを図るなどして,教職員の理解を得ていくことが重要だと考えています。昨年は学内17の部局を回って将来構想を説明,意見交換してきました。

日比谷様 大学の弱いところなのかなと思いますが,方針はきちんとでるが,それを誰が受けて,どういう管理特性と目標値で,いつまでに誰がやっていくのか,そしてそれをどうレビューしていくのかといった方針展開・管理が,ガバナンスで重要だと思います。

髙橋学長 第三期中期目標・中期計画の策定でもKPI(重要業績指標),ロードマップの作成などを行っていますが,まだまだ浸透していないところもあります。これからもグローバル人材の育成や,研究を通じたイノベーションの創出,地域創生・活性化への貢献などの社会の期待に応えるべく努力していきます。

日比谷様 今日はいろいろとお話ができて,ずいぶんと勉強になりました。創生学部や理系3学部の改組を含め,今後の新潟大学には期待しています。

髙橋学長 こちらこそお忙しい中お付き合いいただき,ありがとうございました。日本海側に位置する総合大学としての特色を活かし,地域に根差しながら世界を見据えていきたいと考えています。本日はありがとうございました。

-対談を終えて 髙橋 姿-

90分の対談を終えて、改めて産業界のニーズを明確に捉え、「自律と創生」の理念のもと、変容する社会に適応する人材育成の必要性を感じました。第3期中期目標・中期計画期間(平成28年4月~平成34年3月)において、創生学部の新設や既存学部の改組など、新潟大学が行ってきた学生のための教育改革を継続して推進していきたいと思います。
大学は、新たな知と価値を創造・発信するものであり、輩出する人材は知識基盤社会の進展に伴い、ますます能動的に社会をリードしていかなければなりません。日比谷様がおっしゃられた「企業とは価値を創造するもの」は、新潟大学での価値の創造を期待するお言葉であり、それを伝えるために、富士ゼロックス株式会社の研究・開発・生産拠点である富士ゼロックスR&Dスクエア、お客様価値創造センターを対談会場にお選びされたと思えます。「新潟大学がんばれ!」とのエールをいただき、感謝の気持ちととともに、ますます身の引き締まる思いで会場を後にしました。

※対談 平成28年4月12日

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本件に関するお問合わせ先

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