脳梗塞の部位により異なる皮質脊髄路の再編様式を解明

2021年10月14日

概要

本研究所 システム脳病態学分野の佐藤 時春 特任助教、中村 由香 特任助手、上野 将紀 教授らは、脳梗塞の起こる位置や大きさにより、皮質脊髄路が異なった様式で再編することを明らかにしました。

脳梗塞は、皮質脊髄路(*1)など運動をになう神経回路をしばしば障害し、運動機能の低下をもたらします。近年の研究から、壊された皮質脊髄路は元に戻らないものの、障害から逃れて生き残ったものが再編により代償的な回路を作り、失われた機能を回復へ導くことがわかってきました。これまで本研究分野では、皮質脊髄路の中には多様なタイプの神経回路が存在することを見出してきました。しかし、様々な脳部位に起こりうる脳梗塞において、これらの複雑で多様な皮質脊髄路がどのような様式で再編するのか不明のままでした。今回、本研究グループは、マウスの大脳皮質において脳梗塞の位置や大きさを調節できる実験モデルを確立し、神経トレーサー(*2)を用いて皮質脊髄路をタイプ別に可視化し、脳梗塞後にそれらの軸索が新たに伸びる投射パターンを詳細に解析しました。その結果、脳梗塞の起こる部位や大きさにより、皮質脊髄路がタイプ別に異なった様式で再編することを明らかにしました。この成果は、脳卒中や脊髄損傷など皮質脊髄路が障害される疾患において、どのような神経回路を修復し再建することが、機能回復へ必要であるのか、治療標的を見出す一助になると期待されます。

本研究成果は、「Frontiers in Neuroscience」誌に2021年10月11日付で掲載されました。

▶公開論文はこちらfigure_ueno_japanese.jpg

用語解説

(*1)皮質脊髄路:大脳皮質と脊髄をつなぐ神経回路であり、手足を意図して巧みに動作させる機能がある。
(*2)神経トレーサー:神経細胞に取り込まれ、細胞体、樹状突起や軸索を可視化できる物質

研究分野

研究成果・実績
このページの先頭へ戻る