お口に気になるものがあれば、口腔細胞診(歯科検診)はいかがでしょうか?

教員コラム(六花) 2023.05.23
田沼順一 大学院医歯学総合研究科 (歯) 教授

皆さんは、どんな時に歯医者さんを受診していますか?虫歯や歯周病の治療などで通院されていると思います。

ところで、口の中にできる口腔がんをご存知でしょうか?2019年に女性タレントさんが「舌がんステージ4」を公表したことで、多数の患者さんが大学病院・基幹病院の歯科口腔外科・耳鼻科の医療機関だけでなく、開業歯科医院にも受診されてパニック状態になりました。現在、日本では2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなっています。また、2021年国立がん研究センター統計によると、口腔がんの罹患者数は過去10年間で2倍以上増加し、約29,000人です。希少がんに分類されてはいるものの、死亡者数は約8,000人で罹患者数に対する死亡者数の割合が高く、子宮がんの約6,800人と比べても極めて多いという現状を一般の方々には全く知られていないという問題があります。さらに口腔がんなどの悪性腫瘍は、生検(患部の一部を針やメスなどで採取)による診断が必須ですが、患者さんの多くは大学病院などの高次医療機関へ紹介され、そこで初めて生検とともに治療がなされているのが現状です。これに至る過程では、開業医での初診から数ヶ月が経っており、もう少し早く受診していたらと思う悪性腫瘍の患者さんも稀ではありません!

そこで皆さんにお勧めできるのが「口腔細胞診」です。特に『口腔の液状化検体細胞診』は、検体採取者の技術差を問わず、開業の歯科医師や研修医などでも迅速・簡便・安価(保険診療)にて施行することができ、患者さんにも低侵襲(痛みがほとんどない)であることから早期普及が望まれています。また、病変を採取する際は、皆さんに馴染みのある歯間ブラシを用いた細胞診を実施しています。口腔がんの早期発見・早期治療に積極的に取り組んでいる新潟大学医歯学総合病院および新潟県歯科医師会の会員の病院だけでなく、口腔がん検診の啓蒙活動の甲斐があってか、ここ数年では県内外の病院でも口腔の液状化検体細胞診が多く実施されています。

ヘルペスなどの口内炎や歯肉・歯周炎などは体調により症状の増悪と軽快が繰り返し生じるために、早期がんの所見はあるものの、医師だけでなく患者さん自身も何の疑いや根拠なく放置しまうことが多くあります。口腔細胞診が広く普及することにより、この悲惨な結果が頻繁に生じている現状を少しでも改善できると考えます。

したがって、このような気になる病変が2〜3週間経過しても完治しなければ、至急近医にて口腔細胞診などを受診して頂けたら、必ず早期発見・早期治療につながるはずです。

口腔の液状化検体細胞診の採取方法から診断・判定および遺伝子解析への応用

プロフィール

田沼順一

大学院医歯学総合研究科 (歯) 教授

専門は口腔がん、特に口腔がん早期診断用マーカーの検索およびモデル動物による発がんのメカニズム解明。口腔の液状化検体細胞診を利用した口腔がん検診の啓蒙活動に取り組む。

研究者総覧

※記事の内容、プロフィール等は2023年4月当時のものです。

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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第44号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

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