「化学の視点」から副作用の少ない創薬を目指す~四重鎖DNAを用いた独自創薬モダリティ「IRDAptamer」の開発と応用~

新規創薬モダリティ開発でがん治療薬や治療法の発展に貢献

研究(六花) 2024.04.17
中馬吉郎 理学部 准教授

がんは現在、日本人の死亡原因の第1位。全体死亡者の3人に1人ががんで死亡、また、死亡するまでに2人に1人ががんになるといわれている。がんの代表的な治療法は抗がん剤によるものだが、一般的な抗がん剤は正常細胞の分裂にも悪影響を与えることも知られていて、副作用による生活の質の低下や抗がん剤に対する耐性細胞の出現、2次がんの発生など、いくつかの問題点が存在している。そのため、がん細胞に特異的に働きかけるための分子標的薬の開発が課題になっている。

このような状況に対して中馬吉郎准教授は、治療薬の開発やがんを含む疾患メカニズムの分子レベルの解明、がんになる前に原因を見つける高感度な検査手法やセンサーなどの機能分子開発に取り組んでいる。

「抗体医薬は世界の医薬品の売り上げの半分以上を占め、標的をピンポイントで狙えるため高い治療効果が期待できます。しかし一方で、開発に時間とコストがかかることや、副作用のリスク、標的分子の枯渇、抗体は大きく細胞内を標的にできないなどの課題もありました。そのため新規創薬モダリティの開発が解決策になるのです」

中馬准教授が独自に開発したのがイオン刺激応答性DNA アプタマーだ。細胞内を標的とすることが可能な新規創薬モダリティとして創薬業界の課題克服に貢献可能だという。

「イオン刺激応答性DNA アプタマーには、3つの独自機能があります。1つ目は細胞膜透過性です。疾患原因タンパク質の7~8割の分子が存在する細胞内を標的とすることが可能です。2つ目はイオンや光などの外部刺激による薬効のオン/オフ制御です。がん細胞に対しては機能をオンにして死滅させ、正常細胞に対しては機能をオフにし作用させません。3つ目は多様な疾患原因タンパク質に適応可能な点です。私たちの研究室では膨大なタンパク質のライブラリを保有しているため、ターゲットに対して1対1で対応する薬の探索が可能です」

イオン刺激応答性DNAアプタマーの開発を通し、関連する「核酸アプタマー及びその使用」が2023年4月に特許を取得。現在も核酸アダプタマー組成物、抗がん剤、がん治療キットに関する特許を出願中だ。

「学内外の多分野の研究者との共同研究も積極的に進めています。これらの成果を社会実装し、がん治療や疾患の早期検知に貢献していくことが目標で、治療薬や治療法の開発が化学者としての社会貢献につながると考えています」

刺激応答性DNAアダプタマーの独自機能のひとつ。
イオンや光といった外部刺激により薬の効果のオン/オフスイッチが可能

プロフィール

中馬吉郎

理学部 准教授

博士(理学)。専門は生化学・分子生化学。新潟大学研究統括機構研究教授。

研究者総覧

趣味は国際交流と釣りだという中馬准教授。写真は研究室での佐渡旅行の際、学生とともに釣りをした時の様子。

※記事の内容、プロフィール等は2024年3月当時のものです。

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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第47号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

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