再生医療の魅力

教員コラム(若手研究者) 2024.05.14
牛木隆志 医学部保健学科 准教授

新潟大学医歯学総合病院では再生医療に取り組んでおり、私は輸血・再生・細胞治療センターにおいて長年、製造管理業務に携わっています。再生医療は産業としての側面も持ち合わせるため一見すると華やかな印象のある分野ではありますが、実際は患者さんへ安全に最新鋭の治療がお届けできるよう日々、安全性の確保と品質の保証に努めています。具体的にはGMP(Good Manufacturing Practice)グレードという治験薬を製造する際に遵守すべきガイドラインに準じて製造設備の管理や製造工程の記録を行ったり、法律が改正されれば遵守したりと地道な努力の継続が求められる医療です。

その一方、現在、実施している再生医療をより良いものにするための研究にも取り組んでいます。私たちの研究グループでは「多血小板血漿」というアスリートの筋・腱損傷に対する自己血小板由来の細胞製剤について精力的に研究しています。「多血小板血漿」はアスリートの筋・腱損傷に対する自己血小板由来の細胞製剤であり、スポーツ医学の分野においてメジャーリーガーなどのアスリートの靱帯損傷の治療で報道されたことから日本でも広く知られることになりました。アスリートにとって手術は時に選手生命を左右しますので、多血小板血漿は手術を回避し得る有効な治療選択肢の一つですが、不応例も存在します。多血小板血漿の研究は製剤中に含まれる血小板の大きさが約2-3μmと赤血球の半分以下の微小さですので、その解析は非常に難易度が高くトライアンドエラーの繰り返しですが、最近は多くの研究成果を世界に向けて発信できるようになりました。このような研究成果は将来の多血小板血漿療法を変えていく可能性がありますので大きなやりがいがあります。

新潟大学においてアスリート再生医療に携わっているメンバー

2022年からは新潟大学医学部保健学科にて臨床検査技師を志す学生の教育に取り組んでいます。再生医療に興味を持ってくれる若者も現れてきており嬉しく思う反面、着実な医療の実践ができる次世代の医療者を育成できるよう気を引き締めて行きたいと思います。

再生医療は現代医療の5大イノベーションの一つとされ、医療・医学関係者だけではなく、材料科学などの研究者や企業人が連携して成り立っている医療分野です。しかしながら、その根底にあるのは安全で良質な医療を届けるという医療の根本にある精神であると本コラムを書きつつ改めて感じています。「医療人の誇りと真心を持って最先端医療を成していく」、それが再生医療を届けていく魅力なのかも知れません。

プロフィール

牛木隆志

医学部保健学科 准教授

博士(医学)。医師。専門は血液内科学、輸血・細胞治療学および再生医療。京都大学大学院医学研究科特別研究生、オーストラリアWEHI研究所博士研究員および新潟大学医歯学総合病院輸血・再生・細胞治療センター副センター長・病院准教授を経て2022年から新潟大学医学部保健学科准教授。新潟大学医歯学総合病院輸血・再生・細胞治療センターおよび血液内科兼任。

研究者総覧

※記事の内容、プロフィール等は2024年5月時点のものです。

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