
センサ・マイクロマシン技術で一歩先の未来を切り拓く
マクロな変化を肉眼が捉える前に未来を予測する技術を開発
薄い板状の基材表面にナノメートルからマイクロメートルサイズの形状を作る半導体微細加工技術。スマートフォンをはじめ、自動車や家電製品などに実装され、私たちの生活を便利にし続けている。安部隆教授はこれらの技術を用いて、小さなセンサやマイクロマシンを作る研究を進める。マイクロマシンを作る生産装置から実際の作製工程まで全てを手掛け、世界初となるガラス・水晶や特殊金属製のセンサやマイクロマシンの生産技術も開発した。
「いかに小さくするかという研究は1970年代からありました。世界初の研究もみんながやり始めたら古い研究になる。学生には『今、面白い』と思うことより20年後に形になるものを研究するように話しています」
その信念の背景には学生時代、研究に用いた市販の計測機器の性能が不十分で実験で苦労した経験がある。すでにある機器を「買う」のではなく、「世界にないものをゼロから作る」と発想を転換。世界初の装置を自分で作ることに興味を持ち、大学院修了後、東北大学の江刺正喜教授に師事。マイクロマシンを作る装置や加工技術分野の研究を始めた。
「装置や技術を作る過程で学ぶことは多く、機械を作るためには分野を超えて幅広く工学を学ぶ必要があります。小さなセンサは高感度で、市販センサでは測れない僅かな変化も計測できます。今後はただ計測するだけではなく、肉眼で捉える前に材料・構造体の状態変化を診断できる水晶センサを用いて、観察対象の未来予測に貢献する技術に育てたいと思います」
安部教授の技術は、農業・食品加工では脂ののりや含水量、防災対策や土壌調査、樹木や植物の健康状態モニタリング、水質・油の管理、コンクリ・モルタルの劣化度などを数値化できる。次の製品を探索する様々な企業との連携も期待される。
「新しいものや技術は新しい世代が生み出すものだと考えています。頭の中で思い描いたものを実際に形にできる人材、いわゆるスマートクリエーターの育成に力を入れています」
培ってきた研究と信念を次世代に紡いでいく。
プロフィール

素顔
卒業生の活躍する姿を見るのが楽しみだという安部教授。
毎年、東京で開催される展示会で研究成果を出展しているが、新潟大学の卒業生などゆかりのある方がブースを訪問してくれるのが楽しみの一つとなっている。
「卒業生のみなさん、安部研究室のブースを見かけたらお声掛けください。」
※記事の内容、プロフィール等は2024年7月時点のものです。
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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第48号にも掲載されています。