
バイオマスの高効率転換による高純度水素および基礎化学品の製造
再生可能エネルギー資源の効率的な転換を実現し持続可能なエネルギー社会の構築に貢献する
地球温暖化抑制のために、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量削減や、化石燃料に代わる再生可能エネルギーの開発・利活用を進める研究が注目されている。中でも高純度の水素は自動車の燃料としても注目されるが、その生成にあたっては、生成技術の確立やコスト削減などの課題がある。李 留云助教は、バイオマスを燃料として、鉄の還元反応と酸化反応を循環させるケミカルルーピング燃焼技術を用いて高純度の水素を製造する研究を行っている。
「私はクリーンな水素社会を実現したいとの思いから中国の大学でエネルギー研究を専攻していました。そこで日本の研究者の講演を聞き、先進的な研究内容や技術に感動しました。その後、新潟大学で研究を行う機会を得ました」
従来の高温ガス化では、一つの反応器(化学反応を効率的に行うための装置)内で反応させるため、複数のガスが混合して生成され、それらを分離させるための工程が必要だった。そこで、李助教は反応器を分けることにより、それぞれで異なる反応を起こすケミカルルーピング水素生成法を開発。高純度の水素生成に成功した。この技術は、水素の生成過程で発生する二酸化炭素を分離する装置を必要とせず、コスト低減も期待できるという。
「再生可能エネルギー実用化のためには環境への配慮と同時に、資源の安定性も非常に重要なため、原料にはバイオマスを選びました。段階的に化学反応を進め、反応塔を組み合わせることで、それぞれの装置から分離不要な単一種のガスを生成できるように操作しています。今後も、システムの確立と高純度水素の量産化を実現するために実証実験を続けます。再生エネルギーの分野は日々、進歩していて、二酸化炭素を原料に有用な化学物質を製造する研究もあります。世界中での再生可能エネルギーへの関心の高まりはとても嬉しく、励みになります」

ケミカルルーピング燃焼技術による高純度水素生成のイメージ図
プロフィール

李留云
博士(工学)。専門はエネルギー工学。2010年に新潟大学着任。新潟県産の木質バイオマス(未利用間伐材を原料とする木質ペレット)からエネルギーや有用な化学物質を作る研究を行う。
素顔
新潟に来て初めて海を見たという李助教にとって、キャンパス近くの海はお気に入りの場所だ。
研究で追い込まれた時には、海を眺めながら食事をとることでリフレッシュできるという。
「海を見るとパワーをもらっている感じがして、気に入っています。」

※記事の内容、プロフィール等は2025年10月当時のものです。
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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第53号にも掲載されています。


