酒粕アップサイクル研究-健康と地域社会に貢献する新しい価値の創出

酒粕の新たな可能性を拓き健康寿命延伸と地域の魅力発信に寄与する

研究(六花) 2026.03.06
柿原嘉人 大学院医歯学総合研究科(歯)/日本酒学センター 助教

超高齢社会といわれる日本では、骨粗しょう症患者数が増加の一途をたどっている。柿原嘉人助教は、健康に有用な食品の栄養成分の探索とその効果について研究。骨粗しょう症予防が期待される新しい機能性表示食品の開発を目指す。

「いくつかの食品素材を調べる中で、栄養価が高く昔から健康増進や美容に効果があると言われる酒粕に着目しました。酒粕に含まれている有用な成分の探索、そして骨代謝や健康維持増進にどのような効果をもたらすのかを調べています」

骨粗しょう症は、新しい骨を作る骨芽細胞と古い骨を壊す破骨細胞のバランスが加齢とともに崩れることで骨がもろくなる病気。特に閉経後の女性は、女性ホルモンの量が低下し破骨細胞の働きが強くなるという。柿原助教は卵巣を摘出したマウスに酒粕を与え、酒粕が骨芽細胞を活性化させ、破骨細胞を抑制する効果を発見。2025 年9 月に、酒粕と米麹の骨粗しょう症予防効果を動物実験で検証した論文を発表した。

「酒粕は様々な可能性を秘めていることが分かりました。最終的な目標であるヒト臨床試験に向けて成分解析と実証実験の両方に注力していきます」

また、研究と並行して、酒粕を使った食品の開発や市場展開についても検討している。目下、注目しているのは赤酢。伝統的な江戸前寿司のシャリに使われてきた調味料だ。一般的な米酢は日本酒を酢酸発酵させて作られるが、赤酢は酒粕から作られる。

「酒粕に限らず食品の需要を増やすためには機能や健康効果だけでなく、前提として『おいしいこと』が非常に重要。赤酢は発酵食品ならではの香りとうま味があり、酸味もマイルド。さらに江戸時代からアップサイクルされていた食品という物語があります。日本酒学センター設立以降、酒蔵の方々と直接話す機会も生まれ、研究のヒントや発見に繋がっています。日本酒や酒粕の新たなチカラや魅力を明らかにし発信することで、新しい付加価値を生み出し、酒造業界や地域の健康づくりに貢献できればと思っています」


酒粕のアップサイクルにはQOLを向上し、地域を活性化させる様々な可能性がある

プロフィール

柿原嘉人

大学院医歯学総合研究科(歯)/日本酒学センター 助教

博士(医学)。専門は薬理学、分子生物学。酒粕をはじめ様々な食品の骨代謝に対する効果を研究する。

研究者総覧

素顔

以前からお酒を嗜み、楽しんできた柿原助教。最近では飲む器によって味の感じ方が変わるということに注目。それも研究したいと考えているという。

※記事の内容、プロフィール等は2026年1月当時のものです。

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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第54号・55号合併号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

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