遠いけど身近な太陽フレア

教員コラム(六花) 2026.03.18
金子岳史 教育学部/大学院自然科学研究科 講師

みなさんは太陽フレアという言葉を聞いたことはあるでしょうか? 太陽で発生する爆発現象のことです。太陽フレアは、時期によってはそれなりの頻度で起きているのですが、私が学生だった十数年前は一般に報道されることはほとんどありませんでした。最近はテレビ番組で紹介されたり、大きなフレアが起こった際はネットニュースになったりします。では、太陽フレアは私達の生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

太陽は非常に高温なので、常にX線や紫外線、高エネルギーの荷電粒子(電気を帯びた粒子)など、人体に有害な放射線を出しています。太陽フレアが発生すると、X線や紫外線の強度が一時的に数百倍程度に跳ね上がり、大量の荷電粒子が放出され、地球に飛来することがあります。しかしご安心ください。X線や紫外線の大部分は地球の上層大気に吸収されますので、地上に届くことはほとんどありません。また、荷電粒子は、日本のような中緯度地域では、地球の磁場(地磁気)に阻まれて入って来れません。そのため、地上にいる私たちが直接の健康被害を受けることはまずありません。

一方で、北極圏や南極圏などの高緯度地域では、磁力線が地表まで下りてきていますので、高エネルギー粒子が大気中まで入り込むことがあります。これがオーロラです。オーロラが発生するには、太陽と地球の磁場の向きや、粒子の持つエネルギーなどが複雑に関係します。そのため、太陽フレアが起きたからといって必ずオーロラが見られるわけではありません。自分の目でオーロラを目撃できたとしたら、それはやはり特別な体験と言えるでしょう。

さて、太陽フレアの影響は地上では限定的ですが、地球の上空や宇宙空間では無視できません。2003年には、現代的な精密観測が始まって以来最大規模の太陽フレアが発生しましたが、日本の「みどり2号」をはじめ、各国の人工衛星に故障や一時的な不調が生じました。2022年にも、太陽フレアの影響で、SPACEXのSTARLINK衛星が40機失われました。また、巨大フレアに伴う通信障害やGPS機器の誤作動なども報告されており、北極圏を通る航空機が安全のために航路を変更することもあります。2025年11月に大規模フレアが発生した際には、大手航空機メーカーの一部機体に搭載された飛行制御コンピュータで誤作動の可能性が報告され、ハードウェアやソフトウェアの交換・改修が必要になりました。この影響で、世界的に航空便の遅延や欠航が発生しました。日常生活で太陽フレアを肌で感じることはないと思いますが、テクノロジーに依存する現代においては、実は単なる遠い宇宙の現象ではなくなってきています。社会が便利になるにつれ、宇宙現象の予測はますます重要になることでしょう。

太陽フレアの写真2025年11月11日に発生した太陽フレアの観測例(©NASA/SDO)。
太陽からの紫外線(波長131Å)を撮影している。右上の一際明るい部分でフレアが発生している。

プロフィール

金子岳史

教育学部/大学院自然科学研究科 講師

博士(理学)。専門分野は天文学、太陽物理学。中学校技術科教員養成に携わりつつ、スーパーコンピュータを用いた太陽フレアの数値モデリング研究を行っている。

研究者総覧

※記事の内容、プロフィール等は2026年1月当時のものです。

タグ(キーワード)

この記事をシェア

掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第54・55号合併号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

ページの先頭へ戻る