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RNA結合蛋白質Sbp2Lがオリゴデンドロサイトの成熟に寄与する仕組みを解明-神経疾患の病態解明に期待-

2023年11月20日 月曜日 研究成果

本学大学院医歯学総合研究科神経解剖学分野の矢野真人准教授、武田薬品工業株式会社の湯上真人主席研究員、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、矢野佳芳特任講師らの共同研究グループは、バイオインフォマティクス解析(BI解析)(注1)および分子生物学的・細胞生物学的解析を駆使し、オリゴデンドロサイト(Oligodendrocytes、以下「OL」)(注2)に特異的に発現するRNA結合蛋白質(注3)Secisbp2L(Sbp2l)の同定に成功しました。更には、Sbp2lが、OL分化やコレステロール代謝を制御する転写因子Tcf7l2シグナルを介して、OLの成熟に関わる分子機構を新たに発見しました。本研究成果は、RNA制御を介したOL成熟の新しい分子経路を明らかにしたことにより、今後のOLの細胞機能の解明およびOL異常が関連する神経疾患の病態解明や新たな創薬を含む治療法開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2023年11月15日、Cell Pressが発行する国際学術誌「iScience」のオンライン版に掲載されました。

本研究成果のポイント

  • BI解析によりオリゴデンドロサイト特異的RNA結合蛋白質Sbp2lを同定した。
  • Sbp2lは、Tcf7l2シグナルを介したオリゴデンドロサイトの成熟に関与する。
  • Sbp2lは、SECIS様構造配列を認識し、Tcf7l2 mRNAの翻訳を制御する。
【用語解説】

(注1)バイオインフォマティクス解析(BI: Bioinformatics)
膨⼤なゲノム情報や遺伝⼦、RNAなどのデータをコンピューター解析する手法の総称。今回は、pSI解析(Specificity Index)という細胞タイプ特異性についてp値の数値化を行い、各遺伝子群のOLの分化段階の特異性を検証した。

(注2)オリゴデンドロサイト(OL、希突起膠細胞)
中枢神経系内のグリア細胞の一つで、ミエリン(髄鞘)形成を担い、神経細胞の跳躍伝導を誘導し、活動電位の伝導速度を高める働きを主とする細胞である。

(注3)RNA結合蛋白質
RNA結合蛋白質は、細胞内に発現する1本鎖、あるいは2本鎖RNAと結合する蛋白質の総称で、リボヌクレオタンパク質複合体の構成因子である。転写後調節機構、すなわちRNAスプライシングから蛋白質合成までさまざまな機能を有する。ヒトにおいては、約1542種類存在すると報告されている。

研究内容の詳細

RNA結合蛋白質Sbp2Lがオリゴデンドロサイトの成熟に寄与する仕組みを解明-神経疾患の病態解明に期待-(PDF:2.0MB)

論文情報

【掲載誌】iScience
【論文タイトル】Sbp2l contributes to oligodendrocyte maturation through translational control in Tcf7l2 signaling
【著者】Masato Yugami,* Yoshika Hayakawa-Yano, Takahisa Ogasawara, Kazumasa Yokoyama, Takako Furukawa, Hiroe Hara, Kentaro Hashikami, Isamu Tsuji, Hirohide Takebayashi, Shinsuke Araki, Hideyuki Okano, and Masato Yano,* *co-corresponding authors
【doi】10.1016/j.isci.2023.108451

本件に関するお問い合わせ先

広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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