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新規結核ブースターワクチン候補分子の提案-結核菌生来の翻訳後修飾を有する蛋白質の優れたインターフェロンガンマ誘導性-

2024年05月14日 火曜日 研究成果

本学大学院医歯学総合研究科細菌学分野の尾関百合子客員研究員、吉田豊客員研究員、西山晃史講師、松本壮吉教授らの研究グループは、同研究科呼吸器・感染症内科学分野の菊地利明教授、茂呂寛准教授、国立感染症研究所の山本三郎客員研究員、前山順一主任研究官、公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターの伊保澄子研究員、京都大学の片平正人教授との共同研究で、結核菌と類似した天然変成領域(注1)に翻訳後修飾(注2)を有する蛋白質Mycobacterial DNA-binding protein 1(MDP1)が、抗結核ワクチンBCGを小児期に接種した成人の末梢血刺激で、結核防御に必須とされるインターフェロンガンマ(IFN-gamma)の産生を強く誘導することを見いだしました。また福島県立医科大学総合内科・臨床感染症学講座の安田一行講師、長崎大学病院感染制御教育センターの田中健之病院准教授、長崎大学熱帯医学研究所の山下嘉郎客員研究員等による、フィリピンでのフィールド研究結果では、MDP1応答性のIFN-gamma産生は健常者で顕著で、結核患者では殆ど認められないことが報告されています(安田等、Front Immunol., 2024)。これらの研究結果は、BCGの効果が低下した成人への追加ワクチン抗原として、生来の翻訳後修飾が付加されたMDP1の有用性を示しています。

本研究成果のポイント

  • 免疫原性を有する結核菌抗原(注3)が新規ワクチン候補分子として検討されてきたが、その多くは本来の結核菌抗原の立体構造や翻訳後修飾が考慮されていなかった。また発症を抑え込んでいる無症候感染者よりも発症を許した結核患者において、防御免疫の指標とされるIFN-gammaをより強く産生誘導する蛋白質が、ワクチン候補として試験されてきたという矛盾があった。
  • MDP1に対するIFN-gamma誘導は、結核非発症者>結核患者である。本研究グループは、弱毒迅速発育抗酸菌を利用し、結核菌MDP1に酷似した翻訳後修飾を天然変成領域に有するリコンビナントMDP1(mMDP1)を取得することに成功した。
  • 上記mMDP1はBCG接種歴を有する成人末梢血から、結核予防に必須なIFN-gammaを他のワクチン候補抗原よりも多量に産生した。また、アジュバント(注4)として新規に考案されたDNA(1)とのコンビネーションでさらに多量のIFN-gammaが誘導された。
  • 翻訳後修飾を有したMDP1(mMDP1)と1のコンビネーションは減弱するBCG効果を賦活するブースターワクチンとしての可能性が期待される。
【用語解説】

(注1)天然変成領域:一部の蛋白質の内部(または全体)に存在する領域。アミノ酸配列の低複雑性や偏ったアミノ酸組成のために一定の立体構造をとることができず、まるで変性しているかのように振る舞う。

(注2)翻訳後修飾:蛋白質が合成された後(翻訳後)に、蛋白質へ付加されるさまざまな修飾。メチル化、アセチル化、糖鎖付加、リン酸化などが知られている。

(注3)結核菌抗原:結核菌が産生する蛋白質をさす。

(注4)アジュバント:ワクチンと一緒に投与する物質でワクチン効果を高める。

研究内容の詳細

新規結核ブースターワクチン候補分子の提案-結核菌生来の翻訳後修飾を有する蛋白質の優れたインターフェロンガンマ誘導性-(PDF:640KB)

論文情報

【掲載誌】Scientific Reports
【論文タイトル】Recombinant Mycobacterial DNA-binding Protein 1 with post-translational modifications boosts IFN-gamma production from BCG-vaccinated individuals’ blood cells in combination with CpG-DNA
【著者】Yuriko Ozeki, Akira Yokoyama, Akihito Nishiyama, Yutaka Yoshida, Yukiko Ohara, Tsukasa Mashima, Chikako Tomiyama, Amina K. Shaban, Atsuki Takeishi, Mayuko Osada-Oka, Takehiro Yamaguchi, Yoshitaka Tateishi, Jun-ichi Maeyama, Mariko Hakamata, Hiroshi Moro, Toshiaki Kikuchi, Daisuke Hayashi, Fumiko Suzuki, Toshiko Yamamoto, Sumiko Iho, Masato Katahira, Saburo Yamamoto, & Sohkichi Matsumoto
【doi】10.1038/s41598-024-58836-8

本件に関するお問い合わせ先

医歯学系総務課
E-mail shomu@med.niigata-u.ac.jp

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