令和8年度秋季卒業式 学長告辞

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卒業生、修了生の皆さん。
本日、卒業・修了の日を迎えられた皆さんに、新潟大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。また、今日まで皆さんを支えてこられたご家族、ご友人、そして関係するすべての皆様に、深い敬意と感謝を申し上げます。

今日、皆さんは新潟大学での学びに一つの区切りをつけ、それぞれ新しい道へと歩み始めます。その門出にあたり、「自分で選ぶ」ということについて、お話ししたいと思います。
私たちは、人生のさまざまな場面で選択をします。
どこで働くのか。何を学び続けるのか。誰とともに生きるのか。何を大切にし、何を変えようとするのか。
もちろん、人生には自分では選べないこともたくさんあります。社会の変化、予期しない出来事、周囲の環境。自分の努力だけではどうにもならないこともあります。
いま私たちが生きる社会も、大きく変化しています。生成AIをはじめとする科学技術は急速に進歩し、世界のつながりが深まる一方で、国際社会の分断や気候変動、人口構造の変化など、これまでの常識だけでは答えを出せない問題が次々に現れています。
そのような時代だからこそ、何が起こるかをすべて予測することはできなくても、その状況をどう受け止め、何を考え、どちらへ進むのかを、自分自身で選ぶことが大切になります。

新潟大学の理念は、「自律と創生」です。
私は、この「自律」という言葉を、一人ですべてを決め、一人で生きていくことだとは考えていません。自分とは異なる考えに耳を傾け、人と対話し、ときには自分の考えを問い直しながら、それでも最後には自分で考え、自分で選び、その選択を引き受けること。
それが、自律ということではないかと思っています。
大学で皆さんが経験してきた学びも、本来そのためのものだったのではないでしょうか。
大学は、完成された答えを受け取るだけの場所ではありません。
なぜだろう。本当にそうなのだろうか。このままでよいのだろうか。
そうした問いを持ち、自分で考え、異なる専門や価値観を持つ人と議論し、自分の考えを組み替えていく。その過程そのものが、大学で学ぶということだと私は考えています。
生成AIをはじめとする技術の進歩によって、私たちはこれまで以上に多くの情報や答えを短い時間で得られるようになりました。しかし、どれほど技術が進んでも、何を問い、何を大切にし、どの答えを選ぶのか。それを決めるのは、私たち自身です。
だからこそ、これからの時代には、「答えを知っていること」以上に、「問いを持ち続けること」が大切になるのだと思います。
そして、良い問いは、一人ではなかなか生まれません。自分とは異なる専門、文化、世代、経験を持つ人と出会うことで、自分には見えていなかったものが見えてくることがあります。
新潟大学は、人文科学、社会科学、自然科学、医歯学など、多様な知が集まる総合大学です。
皆さんはここで、それぞれの専門を深く学ぶと同時に、自分とは異なる知や人に出会ってきたはずです。専門を深めることと、専門を越えて人とつながること。この二つは、決して相反するものではありません。異なる知と出会うからこそ、自分の専門もまた深まっていく。
私は、そこに総合大学で学ぶ大きな意味があると思っています。

皆さんがこれから向かう場所は、それぞれ異なります。
新潟で歩みを続ける人、日本の別の地域へ行く人、母国へ帰る人、新しい国へ向かう人もいるでしょう。さらに学びや研究を続ける人、企業で働く人、行政、教育、医療など、さまざまな分野で新しい一歩を踏み出す人がいるでしょう。
どこへ行っても、自分の問いを持ち続けてください。そして、自分一人の考えだけで世界を理解できると思わないでください。
人に出会い、異なる考えに耳を傾け、必要であれば自分自身を変えることを恐れないでください。しかし同時に、大切な場面では、自分で考え、自分で選んでください。
そして、その選択が、自分だけでなく、周囲の人や社会にどのような影響を与えるのかにも、思いを巡らせてほしいと思います。
私たちは社会から切り離されて生きているわけではありません。一人ひとりの判断や行動が、人と人との関係をつくり、やがて社会のあり方を形づくっていきます。
自分で選ぶということは、自由であると同時に、その選択を社会の中で引き受けることでもあります。

「創生」という言葉も、何か特別に大きなものを生み出すことだけを意味するのではありません。目の前の当たり前を問い直すこと。異なる人や知を結びつけること。誰かと力を合わせ、昨日より少しよいものをつくること。そこからも、新しい価値は生まれます。
皆さん一人ひとりが、それぞれの場所でそうした創生を積み重ねていけば、それがやがて社会を変える力になっていくのだと思います。
今日から皆さんは、新潟大学で学ぶ人から、新潟大学で学んだ人になります。そして、新潟大学で育まれた知や経験を、それぞれの場所へ運ぶ人になります。
皆さんと大学との関係が、今日で終わるわけではありません。社会の中で新しい経験をし、そこから新しい問いを見つけ、その問いをいつか大学や次の世代へ返していただければと思います。

人生には、あらかじめ用意された一つの正解があるわけではありません。迷うことも、自分の選択に自信を失うこともあるでしょう。

そんなときには、新潟大学で過ごした時間を思い出してください。
人に出会い、問いを持ち、考え、そして自分で選ぶ。その力を、皆さんはここで育んできました。

どうか、それぞれの人生を、自ら選んでください。そして、その選択を通して、自分だけでなく、人と社会の未来を少しでもよい方向へ動かしていってください。
それこそが、新潟大学の理念である「自律と創生」を、皆さん自身の人生の中で実践することなのだと思います。

新潟大学は、これからも皆さんの母校です。
皆さん一人ひとりが、他者とつながりながら自らの道を歩み、それぞれの場所で新しい価値を生み出していかれることを、心から願っています。
卒業、修了、誠におめでとうございます。

令和8年9月24日
新潟大学長 染矢俊幸

学長メッセージ