総合知を備え新たな価値を創出する人材を育成する大学院組織改革

特集 2026.02.27

社会課題は複雑化を増し、特定分野の専門知識のみでの対応は困難になっている。
科学技術を調和的に社会実装し、新たな価値創造を高めるためには、
人文社会科学と自然科学の知を融合した「総合知」の創出が必要だ。
これらの背景を踏まえ、2026年4月に
現代社会文化研究科と自然科学研究科を統合した「総合学術研究科」、
医歯学総合研究科と保健学研究科を統合した「医歯保健学研究科」を設置する。

※この記事は、2026年1月発行の新潟大学季刊広報誌「六花」第54・55号合併号に掲載したものです。

大学院重点化の目的と背景

大学院改革の背景には複雑化する社会課題がある。牛木辰男学長に聞いた。

「これまでの大学院教育は、研究力を高め、研究を担う人材を育てることが目的でした。しかし、社会の複雑化と共に、大学院は高度化する多様な社会の新しい機能を担う人材育成の場としても考えられるようになりました」

もう一つの要因は国内の急速な18歳人口の減少だ。大学の数や規模もコンパクトになっていくことが予想されている。

「国際社会で生き残っていくため、また世界全体の発展のためにも日本の国力を上げることは必須です。そのためには社会を変革する優秀な人材の数を増やさなければならない。ここが一番大きくシフトすべき点だと思います。大学院教育を高度化することで、研究力を高めることができ、地域の人材育成拠点になります。新潟大学は大学院に軸を置いた大学になることが必要なのです」

さらに、今後の社会では特定の学問分野では括れない分野横断的な知識がますます必要になるという。

「これまでのディシプリン重視型の知識ではなく総合知が必要で、そのために重要なのは文系理系という垣根を壊さなければなりません。全国的に初と言っていい規模で文理融合の大学院が新潟大学に誕生します」

牛木学長の写真牛木辰男 学長

大学院に軸足を置いた「知の再編」社会を変革する高度人材育成へのシフト

総合学術研究科の特色とプログラム

これらの背景や目的から現行の現代社会文化研究科と自然科学研究科は統合され、総合学術研究科となる。修士課程では「人文社会科学専攻」と「自然科学専攻」の2専攻になり、11の学位プログラムが設けられる。プログラムは「専門深化型学位プログラム」と「新潟学際型学位プログラム」に分けられている。

専門深化型学位プログラムは、社会の諸問題に対応できる高度専門職業人や研究者の育成を目指す。一方の新潟学際型学位プログラムは、学問分野を横断した学びを通じて、自ら課題を発見し解決する力の育成を目指す。後者の特色について末吉邦理事(研究・大学院担当)・副学長が説明する。

「例えば、成長分野として注目されるカーボンニュートラルの世界では、太陽光パネルなどのデバイス開発や水素発生などの材料科学が基礎技術となりますが、それを発展・総合的に運用していくためにはマネジメント人材が必要です。つまり実際の社会では工学的センスと経営的センス両方の素養が求められ、複合的な学びが重要になります。また、アニメ・映像資源科学プログラムと日本酒学プログラムについては、人文社会科学専攻と自然科学専攻の両方にプログラムを設け、文系理系の学生が同じ場で一緒に学び、議論する場があるのが特徴です」

これまで文系・理系の間には研究方法論の大きな隔たりがあったという。文系は問いを立てることからはじめ、自然科学系は目の前にある問題を解き、それらを積み上げて大きな問題を解決してきた。

「しかし、実際の社会では互いの方法論の違いを理解した上での合意形成が求められます。研究方法論の違いを理解し、学び合うことは非常に重要。グループでの討論や活動を通して、社会的素養を持ち専門と学際が融合した人材を送り出します」

末吉理事の写真末吉邦理事(研究・大学院担当)

医歯保健学研究科の特色

医療の現場もまた多職種連携の時代だ。少子・高齢化の進展、医学・医療技術の発展などで急速に変化している。社会的なニーズに対応するためには、異分野を横断する視点や多職種連携のスキル、先端医療技術の倫理的な影響に対応する力も求められる。分野を横断的に学ぶ教育体制を整え、研究者や高度専門職業人として必要な素養とスキルの修得環境を提供するため、医歯学総合研究科と保健学研究科を統合し、医歯保健学研究科を設置する。こちらも医療分野における新たな価値創出に貢献するための新しい大学院教育モデルの一つとなると期待される。

高度化する社会における大学院進学の意義

一連の大学院改革を達成するためには、「大学院に行くことにはどのような意味があるのか」という意識の改革が必要だと牛木辰男学長が結ぶ。

「その実現のためには学生だけではなく、社会の理解が必要です。中小企業はまだまだ博士人材の必要性を強く感じてはいないでしょう。大学院を修了した人材を採用すれば、給料を高くしなければならないので二の足を踏むところもある。しかし、急速に変化する社会情勢に対応するためには高度人材が絶対的に必要ですから、そこに対して啓発活動をしなければなりません。これはある意味でキャリアパス教育でもあります。大学院を修了すれば、より自分の将来が明るくなると思えるように道筋を立てること。さらに先のキャリアがあることを伝え続けることが、大学院改革において非常に重要なのです」

※記事の内容、プロフィール等は2026年1月時点のものです。

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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第54・55号合併号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

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