放射線診断医を知っていますか?

新潟大学教員によるコラム“知見と生活のあいだ“

教員コラム(六花) 2022.05.24
髙橋直也 大学院保健学研究科 教授

私は大学教員になるまで、17年間一般病院で放射線科の医師として働いてきました。放射線科医は、放射線を使ってがん治療を行う放射線治療医と、CTやMRIなどの医療画像を診断する放射線診断医に分かれています。一般の方から「放射線技師とは違うのですか?」と言われることもしばしばです。診療放射線技師は撮影のプロですが、診断はできません。医療画像から病気を診断して主治医に伝えることが放射線診断医の仕事です。CTやMRIなどの技術は日々進歩するため、各科の医師がすべて把握しきれません。放射線診断医は、新しい画像技術を学習・研究し、診断に活かしています。

2019年と2021年に放送されたドラマ「ラジエーションハウス」は病院の放射線部門が舞台で、本田翼さんと浅野和之さんが放射線科医を演じました。主人公の設定や治療方針などに非現実的な部分がありましたが、雰囲気はよく出ていました(実は私の著書が劇中で小道具として使用されました)。劇中で本田さんが「アメリカでは放射線科医はとても重要視されており人気も地位もある。彼らがいないと病院が成り立たないことから“ドクターズドクター、医者をリードする医者”と呼ばれています。放射線科医はすべての患者のCTやMRI画像を読影し、診断を下す重要な役割を担っています(フジテレビラジエーションハウス・第1話・一部抜粋)」と説明しています。

他国と比較して、日本には医療機器が群を抜いて多く存在します。人口当たりのCT数は先進国平均の4.5倍、MRIは3倍です(Health at a Glance 2021. OECD)。一方、放射線科医の数は世界の最低レベルで、人口当たり先進国平均の半分以下です(日本放射線科専門医会・医会)。このためすべての病院に放射線科医が常勤できず、地域の中核病院に限られています。

放射線診断医が、患者さんと接する機会は多くありません。医療画像がデジタル化・配信されるようになり、画像診断室のモニターの前が定位置になりました。しかし、画像を通して患者さんの命と向きあう重要な役割を担っているのです。

新潟大学医歯学総合病院画像診断室
放射線診断医は画像を通して、命と向き合う重要な役割を担っています

プロフィール

髙橋直也

大学院保健学研究科 教授

博士(医学)。放射線科診断専門医。CT・MRIなどの画像診断を専門とする。亡くなった方の死因などをCTで診断する「死亡時画像診断」を研究テーマとし、医歯学総合研究科死因究明教育センター副センター長を兼任している。

研究者総覧

※記事の内容、プロフィール等は2022年5月当時のものです。

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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第40号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

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