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ライソシンEは抗結核薬の有望なリード化合物である- 新規の抗菌メカニズムを持った抗菌薬 -

2022年11月04日 金曜日 研究成果

本学大学院医歯学総合研究科細菌学分野のGeberemichal Geberetsadik特任助教、西山晃史講師、松本壮吉教授らの研究グループは、帝京大学(医真菌研究センター・浜本洋准教授、薬学部寄付講座カイコ創薬学講座・関水和久特任教授ら)、大阪健康安全基盤研究所、同研究科顕微解剖学分野との共同研究で、放線菌が産生する抗菌物質ライソシンE(lysocin E)*1が、従来の抗結核薬とは異なる抗菌メカニズムで、多剤耐性結核菌に高い抗菌活性を示すことを明らかにしました。

本研究成果のポイント

  • 結核は現在でも、単独の病原細菌による感染症で最も人命を奪っている。2020年の死亡者数は、150万人に上った(WHO、2021)。
  • 新規結核患者及び再燃例全体の治療成功率は85%(2018年)だが、多剤耐性/リファンピシン耐性結核*2では59%(2018年)に低下する(WHO、2021)。既存の抗結核薬と交差耐性の無い新薬の開発が必要である。
  • ライソシンEは放線菌が産生する抗菌物質で、黄色ブドウ球菌等の細胞膜中の電子伝達系のメナキノン*3に結合し、細胞膜を障害して殺菌作用を示すことが報告された。
  • 本研究グループでは、ライソシンEが多剤耐性菌を含めた結核菌に良好な抗菌活性を示すことを明らかにした。しかも、ライソシンEは除菌に難渋する休眠菌に対しても効果的であった。
  • ライソシンEは宿主細胞への浸透性に問題があるものの、同様に浸透性の低い既存薬ストレプトマイシンと比較しても良好な結果を得た。今後の抗結核薬開発において、既存の抗結核薬と交差耐性が無い、新規のメカニズムを持つ有望なリード化合物*4として期待できる。
【用語解説】

*1 ライソシンE(lysocin E):土壌放線菌Lysobacter sp. RH2180-5株の培養上清から分離された抗菌物質。黄色ブドウ球菌等の細胞膜中のメナキノンに結合し、細胞膜を障害して殺菌作用を示すことが報告された(Hamamoto H et al. Nat Chem Biol. 2015. 11:127–33)。
*2 多剤耐性/リファンピシン耐性結核:結核治療に重要な一次除菌薬リファンピシン(リファンピシン耐性)、または一次除菌薬イソニアジド、リファンピシンの両方に耐性(多剤耐性)な結核菌によって引き起こされる結核。
*3 メナキノン:一般的にはビタミンK2として知られる。結核菌、黄色ブドウ球菌等では細胞質膜に存在する電子伝達系において電子伝達体として働く。
*4 リード化合物:新薬(今回では新規抗結核薬)の開発のもととなる候補化合物。

研究内容の詳細

ライソシンEは抗結核薬の有望なリード化合物である- 新規の抗菌メカニズムを持った抗菌薬 -(PDF:785KB)

論文情報

【掲載誌】Antimicrobial Agents and Chemotherapy
【論文タイトル】Lysocin E Targeting Menaquinone in the Membrane of Mycobacterium tuberculosis Is a Promising Lead Compound for Antituberculosis Drugs
【著者】Geberemichal Geberetsadik, Akane Inaizumi, Akihito Nishiyama, Takehiro Yamaguchi, Hiroshi Hamamoto, Suresh Panthee, Aki Tamaru, Manabu Hayatsu, Yusuke Mizutani, Shaban Amina Kaboso, Mariko Hakamata, Aleksandr Ilinov, Yuriko Ozeki, Yoshitaka Tateishi, Kazuhisa Sekimizu, Sohkichi Matsumoto
【doi】10.1128/aac.00171-22

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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