ダイズ種子発生のエピジェネティクス-ダイズの種子発生を支えるクロマチン制御機構の一端が明らかに-

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研究成果

本研究成果のポイント

  • ダイズではDDM1が失われると発芽後に生育できなくなる。
  • エダマメ(未熟種子)では、光合成に関わる遺伝子の発現にDDM1が必要である。
  • DDM1量の低下による影響は、ヘテロクロマチンよりもユークロマチンの遺伝子で先に現れる。

植物を含む真核生物の核ゲノムは、遺伝子を多く含み比較的活発に働く「ユークロマチン」注1と、トランスポゾン(動くDNA配列)注2などの反復配列を多く含む「ヘテロクロマチン」と呼ばれる領域に大別されます。植物では、ヘテロクロマチンはDNAメチル化などによりエピジェネティックス注3に抑制されており、この抑制にはクロマチンリモデリング因子のDecreased in DNA methylation 1 (DDM1)注4が中心的な役割を果たしています。
本学大学院自然科学研究科博士後期課程のAhsen Gersさん、本学農学部の深井英吾准教授、横浜市立大学木原生物学研究所の殿崎薫准教授、農研機構の加賀秋人グループ長、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授、理化学研究所バイオリソース研究センターの川勝泰二室長らの研究グループは、ダイズではDDM1がユークロマチンの遺伝子の発現制御にも関与していることを明らかにしました。

【用語解説】

(注1)ユークロマチンとヘテロクロマチン
DNAとヒストンなどのタンパク質が形成する複合体をクロマチンといいます。核ゲノムにおいて、クロマチンが密に凝集し高次構造をとっている領域をヘテロクロマチン、クロマチンの凝集がゆるい領域をユークロマチンといいます。前者ではDNAからRNAへの転写が抑制される一方、後者では転写が盛んに行われる傾向があります。

(注2)トランスポゾン(動くDNA配列)
ゲノム内の位置を移動(転移)できるDNA配列の総称。転移先の塩基配列を変えてしまう生物内在の変異源なので、トランスポゾンはヘテロクロマチンとして認識され、転写が抑制されていることが多い一方、過去のトランスポゾンの転移が生物の進化に貢献しているケースもあり、生物の役に立つこともあります。

(注3)エピジェネティクス
DNA配列以外の遺伝情報の総称。例えば、真核生物の核ゲノムDNAのシトシンにはメチル基が付加されることがあり、これをDNAメチル化といいます。同一のDNA配列でも、DNAメチル化されている場合とされていない場合で、DNAからRNAへの転写効率に違いがあることがあります。ヒストンはDNAが巻き付いてクロマチンを構成するタンパク質ですが、ヒストンの種類や修飾によっても転写活性に違いがあることが知られています。

(注4)Decreased in DNA methylation 1 (DDM1)
植物のヘテロクロマチン維持に必要なクロマチンリモデリング因子。植物では広く保存されており、この機能欠損変異体ではゲノム全体、特にヘテロクロマチンのDNAメチル化レベルが低下し、トランスポゾンが活性化されます。機能欠損変異体は、モデル植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)は正常に生育できる一方、本研究のダイズを含む作物では致死や不稔を示すことが知られています。

研究内容の詳細

ダイズ種子発生のエピジェネティクス-ダイズの種子発生を支えるクロマチン制御機構の一端が明らかに-(PDF:1.2MB)

論文情報

【掲載誌】The Plant Journal
【論文タイトル】Differential regulation of heterochromatin and euchromatin by GmDDM1 during seed development ensures seedling viability in soybean.
【著者】Ahsen Gers, Kana Shiraishi, Kaoru Tonosaki, Satoru Okamoto, Akito Kaga, Ryota Kuroda, Jun-Ichi Matsuoka, Atsushi Toyoda, Taiji Kawakatsu, Chiho Maruko, Kazuki Takahashi, Keiichi Okazaki, Moeko Okada and Eigo Fukai
【doi】10.1111/tpj.70921

本件に関するお問い合わせ先

広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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