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肝硬変の悪化に“腸内細菌由来の小胞”が深く関与していることを解明

2023年02月21日 火曜日 研究成果

本学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の土屋淳紀准教授、夏井一輝(大学院生)、寺井崇二教授らの研究グループは、肝硬変の悪化の新たな機序として、“腸内細菌が放出する100nm前後ととても小さい小胞(注1)”が関与し、肝臓に新たな炎症をおこし線維化を悪化させ、また、肝臓が産生しむくみや腹水などの原因にもなる血清アルブミンも低下させることを初めて明らかにしました。本研究の成果より、肝硬変診療を行う上で、従来の腸内細菌のみでなく、細菌の小胞を新たにターゲットにした腸のバリア機能を意識した診療、薬物の開発の必要性が示されました。

本研究成果のポイント

  • 肝硬変の病状の進行には腸内細菌が関わりますが、今回、進行した肝硬変では特に、100nmと非常に小さい腸内細菌の放出する小胞が、悪化の原因の一つになることがわかりました。
  • 細菌の小胞はマクロファージや好中球などの免疫細胞に炎症を惹起し、肝臓の線維化の誘導・悪化に関わります。
  • 細菌の小胞は、肝硬変モデルマウスに投与すると線維化の悪化、アルブミン低下などヒトの進行した肝硬変患者さんと同じような病態を呈します。この病態において、アルブミンの投与により軽減する効果が示唆されました。
  • ヒトの肝硬変患者さんからも細菌の小胞は検出でき、細菌の成分に対する抗体価が上がっていることが確認できました。
【用語解説】

(注1)細菌の小胞:近年、ヒトの研究にて細胞の産生、放出する100nm(ウイルスと同じくらいの大きさ)前後の細胞外小胞(一部は「エクソソーム」の言葉としても知られています)が安定な脂質二重膜で覆われ内部にタンパク質やDNAやRNAなどの核酸などの機能性物質を内包することから、生体で情報伝達物質として機能していることがわかっています。今回は細菌でも同様に産生、放出した小胞が肝硬変の悪化に重要な影響を及ぼすことを明らかにしました。


ヒトから検出された細菌の小胞。黒いスケールは100nmを表します。

研究内容の詳細

肝硬変の悪化に“腸内細菌由来の小胞”が深く関与していることを解明(PDF:7.0MB)

論文情報

【掲載誌】Liver International
【論文タイトル】Escherichia coli-derived outer-membrane vesicles induce immune activation and progression of cirrhosis in mice and humans
【著者】Kazuki Natsui, Atsunori Tsuchiya, Risa Imamiya, Mayuko Osada-Oka, Yui Ishii, Yohei Koseki, Nobutaka Takeda, Kei Tomiyoshi, Fusako Yamazaki, Yuki Yoshida, Riuko Ohashi, Yiwei Ling, Koji Ueda, Nobuko Moritoki, Kazuhiro Sato, Takahiro Nakajima, Yoshinori Hasegawa, Shujiro Okuda, Shinsuke Shibata, Shuji Terai
【doi】10.1111/liv.15539

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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