海から川へ―ゴカイの“滝登り”〜河川淡水域に進出した新種「カワスナゴカイ」を発見〜
本研究成果のポイント
- 佐渡島(新潟県佐渡市)の河川淡水域に生息する新種のゴカイを発見した。
- ゴカイの仲間は一般的に海に生息するため、淡水域から見つかるのは非常に珍しい。
- 本種は海洋生物がどのように淡水環境へと進出するのかを解明するための重要な手がかりとなる。
名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所の下岡 敏士 博士前期課程学生と自見 直人 講師は、長野大学、龍谷大学、本学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)との共同研究で新種のゴカイを佐渡島の河川淡水域で発見し、「カワスナゴカイ」と命名しました。
ゴカイの仲間においては淡水に進出したグループは限られており、特に今回発見されたカワスナゴカイが属するウロコムシの仲間では極めて稀で、日本では初めて、世界では2例目の発見です。
海に住む生物が淡水に適応していくには、浸透圧の調節や川の流れに抵抗する必要があるなどさまざまな難題があります。海→淡水域→陸域、と生物が陸上化する前段階となることもあり、淡水適応の仕組みを探ることは生物学的にも重要な課題です。
本研究ではカワスナゴカイと同属の複数種からDNAを抽出し、初めて淡水性種を含むウロコムシ注1)類の系統樹を作成しました。その結果、カワスナゴカイは海に生息する近縁種の中から特異的に淡水に進出した種であることが明らかとなりました。
中国の故事「登竜門」では鯉が滝を登り竜となりますが、それになぞらえ海から川へと大胆な生息環境の転換を果たした本種の学名をPisione mizuchi(蛟(みずち):神話上の水に住む竜)と命名しています。
本研究を元に、生物の進化の過程における重要なイベントである「海洋生物の淡水環境への進出」がより深く明かされていくことを期待します。
本研究成果は、2026年2月24日22時(日本時間)付BioOneが発行する国際査読付き雑誌「Zoological Science」に掲載されます。
【用語解説】
注1)ウロコムシ
ウロコムシ亜目Aphroditiformiaのゴカイの総称。ゴカイの中でも非常に大きなグループで、一般的に体の背面がウロコで覆われていることが特徴。
カワスナゴカイはその中のノラリウロコムシ科スナゴカイ属に属し、ウロコが退化した特殊なグループである。
研究内容の詳細
海から川へ―ゴカイの“滝登り”〜河川淡水域に進出した新種「カワスナゴカイ」を発見〜(PDF:951KB)
本学の共同研究者
佐渡自然共生科学センター 海洋地域 大森紹仁准教授
論文情報
【掲載誌】Zoological Science
【論文タイトル】Freshwater Colonization by a Scaleless Scale Worm: Pisione mizuchi sp. nov. (Annelida: Sigalionidae) from Sado Island, Japan
【著者】Satoshi Shimooka(名古屋大学), Yoshito Mitsuo(長野大学), Keiko Kishimoto-Yamada(龍谷大学), Akihito Omori(新潟大学), Natsumi Hookabe(国立研究開発法人海洋研究開発機構), Naoto Jimi(名古屋大学)
【doi】10.2108/zs250042
本件に関するお問い合わせ先
広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
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