魚類の社会的知性の基盤と神経基盤の解明:生態との関連性から探る魚類の高次認知

水圏動物の賢さと進化要因を解明しヒトが持っている生き物に対する概念を変える

研究(六花) 2026.07.28
髙橋宏司 創生学部 准教授

動物の「賢さ」は、ヒトを含めた陸上脊椎動物固有のものとされ、「魚類」と「知性」はリンクしづらいというイメージがある。しかし近年、それを覆すような、水圏動物の高次認知能力が次々に発見されている。髙橋宏司准教授は、行動生態学や比較認知科学など複数の分野を融合した認知進化生態学の領域から、水圏動物の賢さを探る研究を進める。

「ヒトの賢さは、複雑な社会環境に適応するために脳が発達し進化したという考えがあります。『社会的知性仮説』と呼ばれる説ですが、社会を形成し個体間で結びつきながら生活することは、水の世界でも存在するため、水圏動物にもそれに伴う賢さや知的行動が備わっている可能性が十分に考えられます。私は魚類を対象とした社会・知性・脳領域に着目し、魚の中に認知というものを見い出す研究に取り組んでいます」

魚類の生態を踏まえた手法によって様々な実験を展開。隠れた餌に対する魚の執着行動から着想を得て、魚は計算ができるかといった検証を行った。

「捕食性魚類のオスカーを用いて、目の前の餌を一度見えなくし、再び出現させた餌を食べた場合、もう餌は無いと理解してその場から立ち去るか、餌を複数にした際はどのような行動をとるかを検証しています。また、飼育条件を変えた場合や群れる魚を利用したアプローチなど、より踏み込んだ形も視野に入れています。今後も実験や検証を重ねていき、魚の高次認知能力を明らかにすると同時に、動物全般の賢さを見つめ直していければと考えています」

ほかにも髙橋准教授は「魚の釣りに対する認知」の実験や「社会的欲求が魚に存在するか」など数多くの研究を並行して行い、あらゆる角度から魚の賢さ、さらには心についての解明を目指す。

「動物の賢さを理解し、複雑な社会を維持する知性の源流を探る認知進化生態学は、行動生態学をはじめ多くの領域への貢献が期待できるため、これからも多角的に研究を継続していく予定です。その上で私自身は、心にフォーカスをあてた研究に注力しています。実験で魚たちはヒトに似た行動や振る舞いをすることがしばしばあります。そういったヒトらしさのような側面から知的行動のメカニズムや新しい心理の法則を解き明かし、その知見を医療や遺伝子分野、AI 分野の発展にもつなげていきたいです」

オスカーを使った実験の様子。隠れ家に逃げこんだ餌を『理解』できれば、
魚の計算能力を調べられるかもしれない

プロフィール

髙橋宏司

創生学部 准教授

博士(農学)。専門は魚類心理学。魚類を中心とした水圏動物の心理・認知について研究。行動生態学や水産学など、さまざまな角度からアプローチを進める。著書に『ヒト心あれば魚心―釣られた魚は忘れない―』。

研究者総覧

素顔

自宅でも魚を飼育し、実験をしているという髙橋准教授は、研究計画を考えることが一番好きな時間だという。知的好奇心が尽きない。

※記事の内容、プロフィール等は2026年5月当時のものです。

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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第56号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

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