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アニメーションが人間の知覚においてどのように作られ受容されるかを研究

2018年11月26日 月曜日 研究

キム・ジュニアン 准教授

人文社会科学系(人文学部)

人文社会・教育科学系(人文学部)キム・ジュニアン 准教授

芸術・メディア理論と自然哲学の観点からアニメーション映像を分析する

アニメーションは、マンガの絵はもちろん、人形や靴のようなモノから生身の俳優に至るまで様々な素材を用いて作られる。さらにCGテクノロジーが加わることで、合成と操作といったアニメーションならではの発想や手法は実写映像の領域にまで適用されている。キム准教授は、芸術・メディア理論と自然哲学の観点からアニメーション映像を研究している。

研究室には膨大な数のアニメーション作品に関する資料が集められている
研究室には膨大な数のアニメーション作品に関する資料が集められている

「メディアが人間の延長であると言われたのは既に数十年前のこと。私は、そのメディアの一つとしてアニメーションが我々や世界との間にどのように介入し影響しているのかを研究しています。現代社会では、人間の延長としての機械が人工の環境を築いており、そのインターフェース上に現れる映像の多くをアニメーションが占めています。1970年代の宮崎駿監督によるテレビアニメ『未来少年コナン』の第23話『太陽塔』にはホログラムの人間や自然の生き物が登場するシーンがありました。これをアニメーションの中で映像テクノロジーに対する批評がされた貴重な一例として扱い、アニメーション作品が我々に伝えてきた知見の体系化を目指しています」
今年10月に開催された文化庁メディア芸術祭新潟展。マンガとアニメーションに対し、より進展した理解を広げるための企画だ。メイン会場の東京のみならず、各地で入選作品の紹介事業を行っている。キム准教授は、その事業の一環である新潟展のアニメーション部門の監修を担当。
「今回の新潟展での私の役割は、第一にメディア芸術祭のアニメーション部門入選作品の中から、新潟展のテーマである『記憶と記録のモノ潟り』に相応しい作品を選定することでした。作品選定の段階においては、特定の文化・情報が中心から周縁へという従来の図式にならないよう、新潟市ならではの歴史と地理的状況を具体的に想定する必要がありました。新潟市出身のアニメーション作家、坂上直さんにキュレーターとしてご協力頂き、協同作業で作品選定を進めました」
中でも、実際に集まった人々の交流そのものが芸術作品になるイベントは興味深い。デジタルデータで存在する複製可能なアニメーション作品の上映とは異なり、その場所と時間でのみ表現が可能な中核的プログラムとなった。

監修担当作品の『はちみつ色のユン』はオリジナルの絵コンテや背景画などおよそ50点が展示された
監修担当作品の『はちみつ色のユン』はオリジナルの絵コンテや背景画などおよそ50点が展示された
メディア芸術祭新潟展では国内外映像作家のトークイベントが独自に企画、実施された
メディア芸術祭新潟展では国内外映像作家のトークイベントが独自に企画、実施された

「国内外のアニメーション監督3 名を招いたトークやワークショップを企画し実現させました。独自の企画としては、新潟会場で映像作品の完成以前の素材や記録を展示しました。これはアニメーションの作り手と受け手との間でどのようにコミュニケーションが行われるのかを理解するための貴重なヒントになります」
キム准教授の研究は、学会発表や論文執筆など、一般的にイメージされる大学における研究活動とは少々印象が異なる。アニメーションは不特定多数の人々に見られるために存在し、今後さらに我々の生活領域に影響を及ぼすことが予想される分野。それが人間の知覚へどのように影響を与えるのかを示す発展性の高い研究と言えそうだ。

新潟市出身の映像作家 坂上直氏のアニメーション『その家の名前』は招待作品として展示・上映が行われた
新潟市出身の映像作家 坂上直氏のアニメーション『その家の名前』は招待作品として展示・上映が行われた
粘土アニメーション「ニャッキ!」で有名な映像作家 伊藤有壱氏のワークショップの模様
粘土アニメーション「ニャッキ!」で有名な映像作家 伊藤有壱氏のワークショップの模様

 

六花 第18号(2016.AUTUMN)掲載

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