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地方利益とは何か

2018年11月26日 月曜日 研究
人文社会・教育科学系(法学部)稲吉 晃 准教授

稲吉 晃 准教授

人文社会科学系(法学部)

Profile

博士(政治学)。2010年より新潟大学法学部に在籍中。

各地の“港”に注目し、それが造られた地方にもたらされた利益とは何なのかを研究

専門は日本政治史。そのなかで「地方利益」をテーマに研究を続けてきた稲吉晃准教授だが、その出発点をこう語る。
「日本政治史においては、戦前の(立憲)政友会が政権をとった時期に、原敬が地方利益をうまくコントロールすることで地方の支持を集め、本格的な政党政治のシステムを作ったと言われています。そういう話を僕は大学生の時に聞いたんですが、“地方利益って…結局、何? 漠然としていて、よく分からない” と思ってしまったんです。例えば、鉄道を敷けば地方利益になると言う人がいるけど、“ここに新幹線を造ります” と公約した候補者に投票する有権者はどれくらいいるのかということ。むしろ新幹線が通ったことで人が流出し、地方の利益にならないのではと考えることもできる。また、これが鉄道ではなく、河川整備や港ではどうなるのか。そんな興味から、大学院に入ってすぐ、このテーマで研究を始めました」

稲吉准教授の著書『海港の政治史』。2015年、後藤・安田記念東京都市研究所「藤田賞」を受賞した
稲吉准教授の著書『海港の政治史』。2015年、後藤・安田記念東京都市研究所「藤田賞」を受賞した

教科書に書かれた事柄の奥を探ろうとする姿勢が研究者たる所以だ。稲吉准教授は「港」に注目し研究を進める。
「戦前の日本の土木事業費はほとんどが鉄道と河川関連で、それらは既に研究し尽くされていた。逆に、港のように注目されなかった分野こそ研究し甲斐がある」
近代日本における各地の海港を題材に、地方にもたらす利益や省益を徹底的に研究。港の建設には鉄道の数十倍の費用がかかると言われている。
「タイムラグはあるけれども、経済効果は確実にある。港を造り、使うことで地方利益がどうもたらされ、いかに地域社会にとって重要かを知ってもらえれば」
その成果として、著書『海港の政治史』が、後藤・安田記念東京都市研究所「藤田賞」を受賞した。若手研究者にとって憧れの賞の受賞は研究を推し進めるうえで大きな後押しになったようだ。
「こうして評価をいただき、“自分がやっていることは間違っていない” と思えました」
また、この著書内で「コスモポリタン型」と表現した「地域社会と中央政府の間で物事を見る存在」に大学の教員はなっていくべきだという思いもある。
「外からの視点を生かしながら、時には地元のことを外へ向けて発信していく。そんな存在でありたいと思います」
今後の研究の深化と、それによる地方都市の発展への寄与に一層、期待が募る。

福岡県の門司税関(左)と門司港駅(右)。現在は観光地として知られる門司港だが、煉瓦造りの税関といった西洋風建築は明治から昭和初期の国際港の象徴だった 福岡県の門司税関(左)と門司港駅(右)。現在は観光地として知られる門司港だが、煉瓦造りの税関といった西洋風建築は明治から昭和初期の国際港の象徴だった
福岡県の門司税関(左)と門司港駅(右)。現在は観光地として知られる門司港だが、煉瓦造りの税関といった西洋風建築は明治から昭和初期の国際港の象徴だった

 

六花 第20号(2017.SPRING)掲載

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