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『ポストフクイチ社会』に向けた原発立地県における地域公共圏構築についての研究

2018年11月26日 月曜日 研究

 

人文社会・教育科学系(人文学部)渡邊 登 教授

渡邊 登 教授

人文社会科学系(人文学部)

Profile

修士(社会学)。
専門は地域社会学、環境社会学。
地域社会における住民自治の問題に取り組む。

ポスト「原発依存」社会の地域公共圏構築の可能性を検討する

「ポストフクイチ社会」とは2011 年3月11日に起きた東日本大震災および福島第1原発事故以降を示す。核と持続可能な地域社会の問題は、現在そして今後の私たちが直面するテーマだ。国は原発維持と脱原発で揺れ、日本社会のエネルギー政策は変容している。渡邊教授は、自主管理の住民投票で原発計画を断念させた新潟県旧巻町と、核廃棄物処理場計画を撤回させた韓国住民運動の調査・研究を経て、ポスト「原発依存」社会に向けた地域公共圏構築の可能性を検討する。
「原発を選択するかどうかはエネルギー選択だけでなく、どのような社会システムを選択するかという問いです。福島第1原発と同様に東京電力の原発が存在する新潟県柏崎刈羽では、2002年のトラブル隠しを契機に他地域にはない独自の監視システムを作り上げました。それが市民を主体にする『柏崎刈羽原子力発電所の透明性を確保する地域の会』です。これは推進派・反対派を含めた住民の原発に関する東京電力の監視・経済産業省へ提言の場として設けられました。例えば、福島では立地市町村と推進派だけの集まりしか存在しませんでした。さまざまな立ち場の住民によって構成されているという点で他に類例がありません。多様な立場の市民が柏崎市の現状を見据えた上で討論を交わせる場があること、そこで将来の地域社会を構想する可能性を高めていこうという認識に至っているのは注目すべきことです」
著書『「核」と対峙する地域社会ー巻町から柏崎刈羽、そして韓国へー』。原発を争点とした地域社会の問題についてまとめた
著書『「核」と対峙する地域社会ー巻町から
柏崎刈羽、そして韓国へー』。原発を争点とした
地域社会の問題についてまとめた

また、再生可能エネルギーも地域自治や住民自治と親和性が高い。新潟市では市民主体の再生可能エネルギーへの取り組みがある。「おらってにいがた市民エネルギー協議会」は新潟市とパートナーシップを締結し、太陽光発電の事業を進めている。
「これも市民が主体的にエネルギーをコントロールするという取り組みです。原発立地県として『ポストフクイチ』の社会選択に繋がる道筋を考えること。それがまさに新潟県には問われていると思います。
そのモデルを作ることは全国的に大きな意味を持ちます。そこでは立場を越えてお互いを認め合い、合意形成ができる可能性があるかもしれません。新潟県には確かな住民の力が息づいています。現状分析をふまえ、その芽がどのように出てくるのかを見極めなければならないと考えています」

市民による自然エネルギーの発電事業を推進する「おらってにいがた市民エネルギー協議会」。その動向にも注目している。写真は総会と新潟県新潟市西区の黒埼市民会館のおらって第一号発電所
市民による自然エネルギーの発電事業を推進する「おらってにいがた市民エネルギー協議会」。その動向にも注目している。写真は総会と新潟県新潟市西区の黒埼市民会館のおらって第一号発電所

 

六花 第22号(2017.AUTUMN)掲載

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