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探究的指導法を軸として高校物理授業の課題点を明らかにする4カ国比較研究

2018年11月26日 月曜日 研究

 

土佐 幸子 教授

人文社会科学系(教育学部)

Profile

博士(教育学・理学)。
物理教育の国際比較を通し、
学習者主体の教授法について研究する。

人文社会・教育科学系(教育学部)土佐 幸子 教授

自主的で対話的な学びのための教育とは?授業の改善を図る方略を提言する

科学的な知識は世界共通だが、教育の手法は知識と生徒の間に教員などのステークホルダーが多数仲介するため国により全く異なる。自国での教え方が決して唯一のものではなく、必ずそこには改善点が見つけられるはず。土佐幸子教授は、日本・アメリカ・中国・インドネシアの4カ国で行われる高等学校物理の授業比較を通して研究を進める。
「調査ではビデオ撮影を含めた授業参観と教員インタビューを実施しています。教員の科学的概念の説明や発問の仕方、教員の意識などを詳細に検討・分析し、各国の特徴を明らかにするのです。例えば、中国のやり方は非常にトレーニング的で、教師が一方的に教えたことを生徒が復唱するようなもの。この対極にあるのがアメリカで、自由な雰囲気の教室で生徒が自主的に質問をするようなスタイルでした。さらにインドネシアでの調査を加えることで、先進国と発展途上国の比較検討もしています」

米国の高校物理授業の様子
米国の高校物理授業の様子
中国の高校物理授業の様子
中国の高校物理授業の様子
インドネシアの高校物理授業の様子
インドネシアの高校物理授業の様子

興味深いのは中学校理科において、アメリカより日本の方が探究的な授業をしているという、予想に反する結果が先行研究で示されたことだ。
「確かに仮説・実験・検証という点において日本では十分な授業が行われていました。しかし、生徒と教師の関わり方の数値はアメリカより少なかったのです。このような中学校における分析結果を基に、今度は日本の高校物理における授業デザインの欠如について原因を探り、授業の改善を図る方略を提言しようと考えています」
自主的で対話的な学びをするためにふさわしい教育とはどのようなものなのか。それは将来的にどのような人材を育成するのが国のためになるのかという問いでもあり、土佐幸子教授の真のねらいはそこにある。
「現在、日本の教育はアクティブ・ラーニングに力を入れていて、アメリカ寄りの人材育成を目指しています。21世紀の世界を鑑みた場合、確かにこれは正しい方向性でしょう。しかし、平均的な学力の向上に貢献してきた日本式スタイルを捨てる必要はありません。日本は異なる文化でもよい面は積極的に受け入れてきた歴史的・社会的な背景があります。教育の現場比較を通し、各国の優れた点を取り入れ授業に反映していくことが重要だと考えています」

授業内で観察された要素の頻度比較

 

六花 第23号(2018.WINTER)掲載

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