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新たな液体が拓く新たなイオン伝導ダイナミクス

2018年11月26日 月曜日 研究

 

梅林 泰宏 教授

自然科学系(理学部)

Profile

博士(理学)。
専門は溶液化学。溶液中の状態、
そこで起きる現象や機能について研究する

自然科学系(理学部)梅林 泰宏 教授

イオン液体※と内部で起こっている現象を研究環境に優しい電解液開発を目指す

ノートパソコンやスマートフォンに搭載されているリチウムイオン電池。軽量で小さく、大容量の電力を蓄えることができるのが特長だ。電池内にあるイオン液体の中のイオン伝導性が高くなるほど高い電力を得ることができる。
梅林教授はリチウムイオン電池内の溶液について研究。溶液に可視光やX 線、中性子などを当て、反射・吸収された光を分析し新しいイオン液体と内部で起こっている現象を調べる。目指すのは、環境に優しく安全な電解液の開発と基礎理論の解明だ。教授が考える新しいイオン液体には、従来と異なる特異的なイオン伝導性があると話す。

リチウムイオンが溶媒やマイナスイオンをはねまわる(ホッピング)と考えられている
リチウムイオンが溶媒やマイナスイオンをはねまわる(ホッピング)と考えられている
溶液内のイオンの動きをシミュレーションを用いて可視化する
溶液内のイオンの動きをシミュレーションを用いて可視化する

「従来の電解質溶液論では、溶液に多量のイオンを溶かすことで電気的に中性になり、電流には寄与しないと考えられていました。しかし、私たちはイミダゾールと酢酸の等量混合物が高い電気伝導性を示すことを見出し、現在、この液体の構造解析や伝導メカニズムの解明に取り組んでいます。これは既存の理論では全く説明できない未知の溶液。従来のイオン伝導や拡散に関する概念から脱却する必要があると思います」
研究が進展すれば、持続可能な社会の実現に向けたエネルギーの開発とそれを供給する仕組みへの貢献が可能になる。

「エネルギー資源に乏しい日本では、発電・蓄電技術の研究開発は極めて重要な課題。大きな電気を効率よく作る一方で、大容量の電気をためることも必要です。必要な量をオンデマンドで供給する仕組みが模索されていますが、大都市でも安全かつコンパクトに大電量を蓄えることが求められている。イオン液体は、イオンだけでできているので水のように蒸発せず、火力発電のようにCO2 を出さないので地球環境に優しい。また、引火や爆発の恐れがないので、究極的に安全な電気だと思います」
持続可能な社会を作るためには、環境に調和したエネルギー開発が必要。これも科学の重要な課題だ。
「私たちの基礎研究が発展すれば、まず原発が不要になるでしょう。将来的には世界中のエネルギー全てを電気にする可能性もあると期待しています」
研究施設での実験の様子。溶液に様々な光を当て、内部で起こる現象を分析する
研究施設での実験の様子。溶液に様々な光を当て、内部で起こる現象を分析する

※1990年頃に発見されたイオンだけからなる
室温で液体の物質

六花 第24号(2018.SPRING)掲載

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