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夕張市の財政破綻を念頭に、アメリカの自治体破綻法制について制度背景と現在の議論状況を明らかにする

2018年11月26日 月曜日 研究

 

今本 啓介 准教授

人文社会科学系(法学部)

Profile

修士(政治学)。
専門は行政法・租税法。
自治体財政の法的問題を研究。

人文社会・教育科学系(法学部)今本 啓介 准教授

財政運営が逼迫した自治体に対しどのような枠組みで対応するべきか

新潟市の財政運営が危機的であることは、既に報じられているところであるが、実際に財政運営が逼迫した場合にどのような枠組みで対応するのが望ましいかという点について、アメリカの自治体破綻法制を参照しながら明らかにしていくことを目下の研究課題としている。自治体の財政破綻では北海道夕張市が有名だ。現在の自治体の財政破綻に対応する制度としては、平成19年に施行された「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(地方財政健全化法)」がある。

夕張駅とスキーリゾートの宿泊施設
夕張駅とスキーリゾートの宿泊施設
夕張駅(来春廃止)
夕張駅(来春廃止)

「この制度では、従前の財政再建団体に相当する『財政再生団体』に指定される前に『財政健全化団体』への指定という段階が新たに作られ、後者の段階では、自治体の自主的な財政再建に委ねられることとされました。また、第3セクター等の財政状況も含めて考慮され、現在は夕張市が財政再生団体に指定されるのみで、財政健全化団体に指定される自治体はなく、自治体の財政統制はうまくいっているように見えます。しかし、財政再生団体である夕張市では、約322億円の再生振替特例債を平成21年度から21年間で完済するという財政再生計画が策定されましたが、この計画は債務の完済を前提としており、住民税の増税や住民サービスの削減を伴うものであることから、人口が減少し続けています」
一方で、地方財政健全化法が制定された当時の議論では、地方債の完全自由化、再生型破綻法制や自治体債務の調整(自治体債務の免除)の必要性が取り上げられたものの、地方財政健全化法ではいずれも実現しなかった。これらの制度案は、アメリカ合衆国における自治体破綻法制(特に、最近ではミシガン州デトロイト市において適用されたことで話題となったチャプターナイン(連邦倒産法第9章)の手続)を参考にしたものであるが、いずれの面も現在の制度の前提からは離れたものである。
「アメリカのチャプターナインによる手続は、連邦倒産法の1 章として設けられたものですが、通常の倒産手続とは異なり債務調整のみを予定しています。そして、手続としては、債務者である自治体が債務調整計画を提出し、裁判所がこれを認可することによって進められるというのが全体の流れです。アメリカのチャプターナインによる手続をはじめとする自治体破綻法制について、その制度背景や制度の適用状況、制度をめぐる議論を参照し、わが国における自治体破綻法制の構築の手がかりを考えることが目下の関心です」

観光施設である石炭博物館
観光施設である石炭博物館
六花 第25号(2018.SUMMER)掲載

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