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花粉を飛ばさない 無花粉スギの普及に向けた研究

研究
自然科学系(農学部)森口 喜成 准教授

森口 喜成 准教授

自然科学系(農学部)

Profile

博士(農学)。
専門は森林遺伝育種学。樹木の品種改良や種苗生産、遺伝的特徴の解明等を行う

DNA解析による大幅な育種期間の短縮を目指す

スギ花粉症の罹患率は年々増加しており、現在では国民の4人に1人がスギ花粉症と言われ、深刻な社会問題となっている。スギは成長が早く、生育適地が広い。育林技術も確立されていることから、花粉症が問題となっている現在でも日本の重要な造林樹種である。そのため、私たち日本人は、これからもスギと上手に関わっていく必要がある。森口喜成准教授は花粉を全く飛ばさない「無花粉スギ」に注目し研究を進める。

無花粉スギは単一の劣性遺伝子によって生じる
無花粉スギは単一の劣性遺伝子によって生じる

「無花粉スギは1992年に平英彰博士が富山県で初めて発見し、単一の劣性遺伝子(雄性不稔遺伝子)によって生じることが分かっています。そのため、父親と母親の双方から雄性不稔遺伝子を受け継いでペアにならないかぎり、子供は無花粉スギになりません。平博士が新潟大学に着任された後、当時の学生だった私が無花粉スギ(新大1号)を偶然見つけたことにより、研究室をあげての無花粉スギの探索が始まりました。今から約20年前のことです」
無花粉スギの探索は平博士が退職するまで7年間続けられ、最終的に12個体の無花粉スギが発見された(新大1号~12号)。しかし、自然界に数千本に1本と推定されている無花粉スギの探索は多大な労力と年月を必要とした。
現在、無花粉スギの種子生産はいくつかの県で開始されているが、無花粉スギの育種母材が少ないことと、優れた新品種を開発してそれらの種子生産を行うまでに膨大な年月を要すること、種子から育てた苗の生産効率が悪いことが課題になっている。そこで新潟大学では、農研機構生研支援センター『イノベーション創出強化研究推進事業』の支援を受け、森林総合研究所や新潟県森林研究所等と連携し、無花粉スギの普及にかかる年月をDNA解析で大幅に短縮するべく、DNA解析による無花粉スギの識別技術の開発や新品種の作出に取り組んでいる。
「近い将来、芽生えの段階でDNA解析によって無花粉スギが判定できるようになるでしょう。育種に時間のかかる樹木では画期的な技術です。新たに供給されるスギ苗が全て無花粉スギとなるように、今後も研究を続けていきます」

農学部の研究施設で無花粉スギの苗高を測定する
農学部の研究施設で無花粉スギの苗高を測定する
花粉を全く飛ばさない無花粉スギ
花粉を全く飛ばさない無花粉スギ

 

六花 第29号(2019.SUMMER)掲載

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