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運動と体温調節

研究

 

天野達郎 准教授

人文社会科学系(教育学部)

Profile

博士(学術)。
専門は運動生理学。発汗や皮膚血流について研究する

人文社会科学系(教育学部)天野達郎 准教授

発汗能力に個人差があるメカニズムを解明 研究成果を教育やスポーツ現場に還元する

ヒトを対象として、暑熱ストレスや運動に対する体温調節反応に関する研究を進める天野達郎准教授。
「体温上昇を抑制する機能が発汗です。しかし、汗をかく能力には非常に個人差があります。日常的に運動する人は、しない人に対して発汗能力が高い。その能力の違いはどこから生じるのかを明らかにする研究をしています」
実験はアスリートや学生の協力と理解のもと、空間内の温度や湿度を調節できる専用の研究施設で行う。協力者の皮膚に発汗カプセルを貼り付けて水分量を計算。さらに直腸や食道など深部の体温、心拍数や血圧なども計測し総合的に運動中の体の反応を評価していく。一方で、専門家と協力しながら薬理的に発汗能力を調べる研究も行っている。

教育学部内にある実験室
教育学部内にある実験室

「汗は汗腺から出ますが、そこでは様々な受容体や神経、ホルモンが関係しています。発汗作用について有名なのは、神経伝達物質アセチルコリンに対して反応する受容体ですが、実験の結果、それだけでは説明できない領域があることが分かりました。汗は日常生活において様々な扱われ方をし、汗をかいた方が良い時と、抑えたい場面というものがあります。運動中に汗をかくのは良いことと言われていますが、緊張した時にかく汗にはネガティブなイメージがあります。汗を生成するメカニズムが神経伝達レベルで分かると、さらなる成果が期待できると思います」
このように発汗と体温調節機能のメカニズムを探索する一方で、その研究成果を教育やスポーツ現場に還元する応用研究や企業との共同研究も進めている。
「スポーツ選手が汗をたくさんかくのは知られていることですが、彼らのパフォーマンスにも汗が関わっている可能性があります。また、熱中症になりやすい方たちを助けるサプリメントや食事法の開発に貢献できるかもしれません」
研究は学生と協力しながら行われる。彼らにとっては最前線の研究を経験する貴重な時間だ。実際の実験を通してリアルな生体反応についての経験を深め、高い学問的知識・経験に裏付けられた研究者や教員を目指すことができる。また学校現場で使える新しい熱中症予防に関する研究もスタート。様々な分野での発展性が期待できる興味深い研究だ。

運動時の発汗などの体温調節実験の様子。皮膚の温度を一定にする専用スーツを着用している。スーツの下にはたくさんのセンサーがあり様々な測定を行っている
運動時の発汗などの体温調節実験の様子。皮膚の温度を一定にする専用スーツを着用している。
スーツの下にはたくさんのセンサーがあり様々な測定を行っている
イオントフォレーシスという方法を用いた発汗の薬理実験の様子
イオントフォレーシスという方法を用いた発汗の薬理実験の様子

 

六花 第29号(2019.SUMMER)掲載

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