このページの本文へ移動
  1. ホーム
  2. 海洋における超微量元素 ・同位体についての研究

海洋における超微量元素 ・同位体についての研究

研究

則末 和宏 准教授

自然科学系(理学部)

Profile

海洋地球化学、特に海洋における微量元素と同位体の生物地球化学サイクルを研究。

自然科学系(理学部)則末 和宏 准教授

海洋中の微量成分を調べることで地球・海洋環境の理解の深化に貢献

海水中には周期表上にあるほとんどの元素が存在する。その中でも濃度が極めて低いものは「微量元素」と呼ばれ、大部分の元素が分類される。則末和宏准教授は、これらの「微量元素」と、その仲間の「微量元素の同位体」に着目し研究を行う。
「微量元素は濃度が低いことに起因するため、分析・計測が極めて難しい。しかし、それらは海洋で起こるプロセスを鋭敏に反映したユニークな時空間変動を示すため、海洋の状態を調べる上で非常に有用なのです。例えば、海底から噴出する高熱水の中にあるヘリウムを調べることで、深層流の動きが分かります。海水は地球全体を循環するのに1000~2000年かかると言われますが、時間スケールが長く広範囲に渡る海水の動きや分布も、海洋中の微量成分を調べることで分かるのです。」

海洋水を保管する大量のコンテナ
海洋水を保管する大量のコンテナ
サンプリングに使用するCTDクリーンマルチ採水システム採水器
サンプリングに使用するCTDクリーンマルチ採水システム採水器

則末和宏准教授は調査のために、長期間の外洋観測に出かける。日本海や太平洋、インド洋、遠くは大西洋や南極海の海上で、表層から底層までの外洋水をクリーンにサンプリング。おびただしい数にふくれあがったサンプルを陸上に持ち帰って科学的な方法で分析・測定する。
「海洋における微量元素と同位体に関する研究成果を蓄積し、地球・海洋環境の理解の深化に貢献できればと考えています。海洋についての基礎的な知識はまだまだ少なく、時代とともに状態が変わるので常に知識をアップデートしていかなければなりません。例えば、福島の原発事故の結果、漏洩した放射性セシウムが、日本の近くに留まるのか、沖合に出ていくのかを調べる上でも海洋における物質の動きは把握しておく必要があります。研究により得られた知見が、地球の今後の運命を推測するうえで大切になってくるのです」
また、全世界の火山活動の10パーセントを担う、世界的にもレアな場所に位置する日本において、海洋研究は非常にマッチすると続ける。
「地震や台風などの自然災害が起こる可能性が高い日本は生活するのに大変な土地。このような場所で暮らす私たち日本人にとって、地球を相手にする海洋研究はとても意義深いと思います」
人類を取り巻く環境は急速に変化している。自然環境や現象を観測し、その背景にある複雑な要因を紐解こうとする則末和宏准教授の研究はますます重要になっていきそうだ。

国際GEOTRACES計画相互較正航海の集合写真。海外の研究者と連携し観測・研究をする
国際GEOTRACES計画相互較正航海の集合写真。
海外の研究者と連携し観測・研究をする

 

六花 第30号(2019.AUTUMN)掲載

注目される研究報告(広報誌「六花」より)一覧へ