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カップルの法的取扱い

研究

大島 梨沙 准教授

人文社会科学系(法学部)

Profile

博士(法学)。専門は民法学。日仏比較を通してカップル関係の法的取扱いのあり方を研究

社会的前提が変化する中 カップルの法的取扱いはどうあるべきか

大島梨沙准教授は、主にフランスの婚姻、民事連帯契約(PACS)、内縁における法との比較によりカップル関係の法的取扱いのあり方を研究している。

書籍
フランスではPACS法改正により、裁判所ではなく市役所での登録が可能に
フランスではPACS法改正により、裁判所ではなく市役所での登録が可能に
「婚姻制度、同性パートナーシップ制度、夫婦財産契約などを素材に、フランス法との比較を通し、カップル関係において法には何が求められているのかを研究しています」
カップルに対する考え方や問題、法律やそこで採用されている解決方法は、その国の文化と強く結びついている。外国の生活のあり方や法律を知ることは、日本のカップル関係や家族生活と法律を相対化する目線ができ、日本の法律の研究をする際に不可欠なものだという。
「フランスと日本では文化的なレベルで行動様式が違います。フランスはすべてがカップル単位で動く社会。職場の飲み会もパートナー同伴で、高校生でもカップル形成が許されています。自然と法律もカップル関係を重視しています。中でもPACSはフランス独自の制度で、カップルが契約で結ばれるという発想自体が面白い。共同生活の中でのお互いが果たす義務や財産についての取り決めで、非婚カップルや同性同士でも利用できます。一方で日本は、届け出一枚で結婚も離婚もでき、カップルを制度的に守るような意識は薄いと思います。離婚や死別時の特別な規定があるとはいえ、結婚しても財産状態は独身時代と変わらないというのが民法の前提ですし、カップル関係を維持していくうえで必要な規定が不十分です」

日本におけるカップルを取り扱う法律は1947年の民法改正時から主要な部分は変わっておらず、家制度を維持するための名残があるもの。現代は核家族化や共働きは当たり前、シングルで生きる選択肢も常識化する時代。社会的前提が変化する中で、これからのカップル関係の法的取扱いはどうあるべきかを考えることは重要だ。
「選択的夫婦別姓や同性婚などにとどまらず、様々な課題があります。こういった課題に対して、今ある法律をどのように適用して解決すべきか、立法による解決が必要ならばどのような法律にすべきかといったことを日々考えています」
カップル関係が持つ複雑な性質にアプローチすることは、「人間とは何か」の理解につながる。非常に興味深い研究だ。

フランスでの在外研究の際に訪れたナント市の裁判所
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フランスでの性的マイノリティの権利保障を訴えるパレード
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六花 第31号(2020.WINTER)掲載

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