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遺伝/ゲノム医療など、難しい状況下での意思決定支援(共有意思決定Shared decision making)に関する研究

季刊広報誌「六花」
医歯学系(医学部保健学科)有森直子 教授

有森 直子 教授

医歯学系(医学部保健学科)

Profile

博士(看護学)。遺伝看護と意思決定支援に関する研究を中心に行う

医療者と患者が相互に影響し合いプロセスを共有し決定することが重要

1980年代から出生前診断が可能になり、妊婦は生まれる前に胎児の健康状態や先天異常の可能性について知ることが可能になった。さらに母体血清マーカーや新型出生前診断など医療技術は進歩を続ける。出産に至るまでに様々な選択肢ができたとき、私たちは生命倫理の課題に向き合うことになる。有森直子教授はそのような場面における意思決定支援の教育プログラムに取り組んでいる。

遺伝ゲノム看護のエキスパートの育成に力を入れる
遺伝ゲノム看護のエキスパートの育成に力を入れる

「出産における健康と権利を守るためには十分な情報提供をしていくことが必要です。なぜなら、そこには本人たちの意思だけでなく、社会や家族の価値観、次世代への遺伝など、様々なことが影響する難しい状況があるからです。だからこそ医療者ではなく、カップルが自立性を持って決定することが大切。それを守るために知識や情報が十分に彼らに提供されていることが重要なのです」
では、正しい情報を伝え、ひとりひとり異なる価値観を持つ個人を支援するためには何が必要なのか。
「私が注目しているのは『シェアードディシジョンモデル(共有意思決定)』。医療者と患者が話し合い、協働して意思決定する方法です。複数の選択肢とそれぞれのベネフィットとリスクについてできる限り提供することで、当事者を巻き込み、相互に影響し合うことで、望ましい決定に向けた行動に歩みを進めることができると考えています。医療者はパターナリスティックではなく、プロセスを共有する存在であることが大切です」
そのパートナーシップを築く上でポイントになるのが、医療者が患者に伝えるリテラシーとコーチングの提供方法だ。
「ひとつはディシジョンエイド。これはデータに基づく統計等の情報と、患者に似た事例の物語の提供。もうひとつはディシジョンガイド。カナダのオタワ大学で発表された『オタワ意思決定ガイド(個人用)』は汎用性が高く、どういう順序で決定を進めればよいのかを示していて、私はこれを翻訳し、紹介しています。医療者は患者がどの選択肢を選んでも支援し続けるという姿勢を持つことが重要です」
生き方が多様化する現代、医療者は「患者はひとりひとり違う」という前提で向き合うことが求められ、患者も自らの意思を医療者に伝えて良いのだと思える土壌作りが求められる。これらの研究は遺伝看護専門看護師の育成のためにも重要だ。「人間はどう生きるか」がかつてないほど問われる時代に注目すべき研究だ。

有森教授が考える意思決定支援のプロセス
有森教授が考える意思決定支援のプロセス
「オタワ意思決定ガイド(個人用)」
オタワ意思決定ガイド(個人用)

 

六花 第32号(2020.SPRING)掲載

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