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脳の生理および病態を 細胞・分子レベルで解明

季刊広報誌「六花」
脳研究所 三國貴康 教授

三國貴康 教授

脳研究所

Profile

博士(医学)。脳でのゲノム編集や分子イメージング・操作等の新しい方法を開発し、
脳機能の生理と病態を分子レベルで理解することを目指している

最先端技術を使って学習・記憶の生理と発達障害の病態を細胞・分子レベルで研究

新潟大学脳研究所は脳研究の世界的な変貌と進歩に対応し、国内外研究者との共同研究の核となる、わが国で最初の脳に関する国立大学附置研究所。
三國貴康教授は、脳における学習・記憶を細胞・分子レベルで理解することを目指した研究を行っている。

「研究の発端は私自身の小児科医経験にあります。できなかったことができるようになっていくときに子どもの脳の中でどのような変化が起きているのか、学習や記憶をするときの脳の仕組みを知りたいと思ったのです。また、そのような神経回路の変化が起こりやすい時期『臨界期(クリティカル・ピリオド)』と、それを過ぎてからの脳の変化にも興味を持っています。臨界期と学習・記憶の関係もテーマのひとつです」

 

SLENDR法による脳組織中の分子イメージング
SLENDR法による脳組織中の分子イメージング

従来の研究では、脳組織内にある分子Aが学習・記憶に影響を与えることは分かっても、分子Aがいつ、どこで、どのように動いているかは解明されていなかった。三國教授は分子を解析するため、実際に顕微鏡でその動きを見ることができる標識技術「SLENDR」と、ウィルスベクター(遺伝物質を細胞に送るためのツール)を使った、より高性能の「vSLENDR」を確立。脳組織内の1細胞にゲノム編集技術を適用し、標識化した分子Aの局在や動態を、高度かつ迅速に観察することを実現した。

学習・記憶における脳の仕組みを知る研究は、効率の良い学習方法の究明や記憶することが難しくなる認知症の治療法の開発にもつながる。発達にともなう神経回路の変化の分析は、発達障害のメカニズム解明と治療法の開発にも応用可能だ。

「記憶はその人のアイデンティティを形成しているもので、非常にドラマティックな脳の機能です。覚えたいのに覚えられない、忘れたいのに忘れられないなど、自分では制御できない部分がある記憶のメカニズムが明らかになれば、人間はもっと幸福になれると思います」

三國教授が在籍する脳研究所では、他にも革新的な技術開発で未解明の問題に取り組み、その研究は全国から注目を集める。

「世界中で脳の研究が行われている中で、オリジナルの研究を世界に発信していくためには最新技術でのアプローチが不可欠。研究室には新しい研究をやりたい仲間が集まっています。日々、自由な発想で新しい方法の開発・実践を繰り返す。自分たちにしかできない研究を実現させていくのはとてもやりがいがあります」

 

研究室で自ら構築した顕微鏡光路
研究室で自ら構築した顕微鏡光路

 

六花 第36号(2021.SPRING)掲載

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