このページの本文へ移動
  1. ホーム
  2. ニュース
  3. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における自律神経を介したセロトニンによる多臓器連関の関与を解明―NAFLDにおける自律神経経路を介した肝-脳-腸連関と新規治療への応用―

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における自律神経を介したセロトニンによる多臓器連関の関与を解明―NAFLDにおける自律神経経路を介した肝-脳-腸連関と新規治療への応用―

2021年03月31日 水曜日 研究成果

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は主に生活習慣病を背景にもつ慢性肝疾患です。肥満人口の増加とともに世界的に増加傾向にあり、NAFLDが原因の肝がんも増加しています。NAFLDの病態は未解明な部分が多く、そのため未だに決定的な治療法がありません。今回、本学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の髙昌良(大学院生)、医学部医学科総合診療学講座の上村顕也特任教授、大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の寺井崇二教授らの研究グループは、自律神経経路(注1)を介したセロトニン(注2)の変化が肝-脳-腸連関を介してNAFLDの病態に関与することを解明しました。

本研究成果のポイント

  • NAFLDの病態には生活習慣病、遺伝的素因、環境因子などが関与すると考えられていますが、明確な病因は未解明で、決定的な治療法はありません。
  • 脂肪毒性などに伴って、肝臓から脳へシグナルを伝達する自律神経経路(求心性経路)を遮断することでNAFLDの進行が抑制されました。
  • 求心性内臓神経の遮断は、脳からの自律神経経路(遠心性経路)刺激に基づく小腸セロトニンの発現を低下させ、腸内細菌叢(腸内フローラ)や腸管のタイトジャンクション蛋白(注3)に変化を生じさせました。
  • これらの結果は、小腸のセロトニン受容体の拮抗薬の投与で再現されました。
  • 求心性内臓神経シグナルと小腸のセロトニン発現を調節することがNAFLDの治療に有効であることが示唆されました。

【用語解説】
(注1)自律神経経路:交感神経系と副交感神経系の2つの神経系で構成される末梢神経経路です。内臓の機能を調節する遠心性経路と内臓からの情報を中枢神経系に伝える求心性経路の2つの経路から成り立ちます。
(注2)セロトニン:主に小腸にあるクロム親和性細胞で産生され、90%が消化管粘膜に存在します。腸の蠕動亢進や血液凝固、血管収縮の調節を行い、脳内セロトニンは生体リズム、睡眠などに関与することが知られています。最近では、腸管バリア機能への影響や肝障害時の肝再生を促す働きなども報告されています。
(注3)タイトジャンクション蛋白:タイトジャンクション蛋白は、腸などの上皮組織を構成する上皮細胞に存在する細胞間接着装置であるタイトジャンクションを構成する蛋白です。細胞内裏打ち蛋白であるゾニューラ オクルディン(ZO: Zonula occludens)や膜貫通型タンパク質であるクローディン(Claudin)などがあります。

研究内容の詳細

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における自律神経を介したセロトニンによる多臓器連関の関与を解明―NAFLDにおける自律神経経路を介した肝-脳-腸連関と新規治療への応用―(PDF:2.0MB)

論文情報

【掲載誌】Disease Models & Mechanisms
【論文タイトル】Modulation of serotonin in the gut-liver neural axis ameliorates the fatty and fibrotic changes in nonalcoholic fatty liver
【著者】Masayoshi Ko, Kenya Kamimura, Takashi Owaki, Takuro Nagoya, Norihiro Sakai, Itsuo Nagayama, Yusuke Niwa, Osamu Shibata, Chiyumi Oda, Shinichi Morita, Atsushi Kimura, Ryosuke Inoue, Toru Setsu, Akira Sakamaki, Takeshi Yokoo, Shuji Terai
【doi】10.1242/dmm.048922

本件に関するお問い合わせ先

広報室
電話 025-262-7000

他のニュースも読む