沈み込み帯における二酸化炭素の固定化がマントルの破壊を引き起こす-炭素の循環とプレート境界での地震現象との関係性を示唆-
炭酸塩または有機物起源の炭質物として1兆トンを超える炭素が、毎年、プレートとともに沈み込んでいます。地球内部の炭素循環は、表層環境に大きな影響を与えますが、沈み込み帯付近でのその実態はよくわかっていません。
本学理学部のマドスーダン サティシュクマール教授、東北大学大学院環境科学研究科の岡本敦教授、宇野正起助教、大学院生の吉田一貴氏、海洋研究開発機構の大柳良介日本学術振興会特別研究員(現、国士舘大学講師)、鹿島建設株式会社の清水浩之博士は、沈み込み帯のマントル起源である蛇紋岩体(マントルが水を吸収した岩体)に炭酸塩脈が発達していることを発見し、産状の観察、化学分析と熱力学的解析を行いました。その結果、この岩体は均質に蛇紋岩化したのちに、破壊が起こりながら複数の炭酸塩鉱物(二酸化炭素を結晶内に含む鉱物)が析出していることを見出しました。さらに、この蛇紋岩の炭酸塩化は、固体体積が収縮しながら脱水する反応で、間隙水圧の上昇が起こるために、き裂形成・物質移動・反応が自己促進的に進行することをつきとめました。この反応が起こる、沈み込み帯のマントルの最も浅い部分では、スロースリップなどの地震現象が起こっており、地球内部の炭素循環とプレート境界の流体化学と地震活動を結びつける新しい研究の解明が期待されます。
本成果は、2021年8月3日、英国Nature Research社が発行する科学誌Communications Earth & Environmentに掲載されました。
発表のポイント
- 沈み込み帯の変質マントル由来の岩体(蛇紋岩体)に、堆積物の炭質物を起源とする二酸化炭素から生成した炭酸塩脈が発達していることを発見。
- 蛇紋岩体の炭酸塩化作用(二酸化炭素固定)は、固体体積の減少と流体圧上昇を伴って岩体の破壊を引き起こし、自己促進的に進むことを発見。
- 地球内部の炭素循環と、沈み込みプレート境界での流体や地震とを結びつける新たな物質反応科学の確立が期待される。
研究内容の詳細
沈み込み帯における二酸化炭素の固定化がマントルの破壊を引き起こす-炭素の循環とプレート境界での地震現象との関係性を示唆-(PDF:2.1MB)
論文情報
【掲載誌】Communications Earth & Environment
【論文タイトル】Rupture of wet mantle wedge by self-promoting carbonation
【著者】Atsushi Okamoto, Ryosuke Oyanagi, Kazuki Yoshida, Masaoki Uno, Hiroyuki Shimizu, Madhusoodhan Satish-Kumar
【doi】10.1038/s43247-021-00224-5
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