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口腔がん進展メカニズムの一端を明らかに-がん関連線維芽細胞とがん細胞のクロストーク-

2021年10月07日 木曜日 研究成果

本学大学院医歯学総合研究科の羽賀健太歯科医師と同研究科口腔病理学分野の山崎学講師、田沼順一教授らの研究グループは、同研究科生体組織再生工学分野(泉健次教授)との共同研究で、口腔がんの進展にはがん関連線維芽細胞(CAF、注1)の存在が重要であることを明らかにしました。本発見から、がんの進展を抑制する新しい治療法の創出につながることが期待されます。
本研究成果は、2021年10月5日に国際学術誌「Translational Oncology」にオンライン掲載されました。

本研究成果のポイント

  • 口腔がん細胞とCAFの共培養3Dインビトロモデル(注2)で、CAFが分泌するTGF-βによりがん細胞のSOX9(注3)発現が亢進し、がんの浸潤と強く関連することを示しました。
  • 免疫不全マウスでの口腔がん細胞とCAFの腫瘍形成作用は、口腔がん細胞と正常線維芽細胞のそれより2倍高くなりましたが、TGF-β(注4)選択的阻害剤を同時に投与すると腫瘍形成が抑制されました。
  • 以上の実験結果を手術で切除されたヒトがん組織でも立証することができました。
  • がん組織周囲の微小環境を構成する細胞であるCAFを標的とした新規治療法開発への応用が期待できます。

【用語解説】
(注1)がん関連線維芽細胞(CAF):
がん間質(がん細胞周囲に存在し、がんを支える組織)を構成する線維芽細胞(間質を構成するコラーゲン線維などの基質を産生する細胞)
(注2)共培養3Dインビトロモデル:
コラーゲンゲル製などの足場材を利用し、異なる細胞を3次元的位置関係で“共培養”する方法で、一般的な培養皿を用いた平面の細胞培養法より生体内の環境を模倣できる培養技術として有効であることがわかっています。
(注3)SOX9(Sry-box 9):
性分化や軟骨形成における重要な転写因子。近年では乳がんや大腸がんなど種々のがんにおいても SOX9が高発現し、がんの浸潤増殖に関与することが報告されています。
(注4)TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β):
TGF-βは様々な細胞に対して増殖抑制、アポトーシスや分化、血管新生、免疫抑制、細胞運動など多様な作用があります。がんに対しては抑制・促進の二面性をもつ細胞増殖因子として知られ、標的遺伝子の転写を調節し、多様な生理活性を有しています。

研究内容の詳細

口腔がん進展メカニズムの一端を明らかに-がん関連線維芽細胞とがん細胞のクロストーク-(PDF:874KB)

論文情報

【掲載誌】Translational Oncology
【論文タイトル】Crosstalk between oral squamous cell carcinoma cells and cancer-associated fibroblasts via the TGF-β/SOX9 axis in cancer progression
【著者】Kenta Haga, Manabu Yamazaki, Satoshi Maruyama, Masami Kawaharada, Ayako Suzuki, Emi Hoshikawa, Nyein Nyein Chan, Akinori Funayama, Toshihiko Mikami, Tadaharu Kobayashi, Kenji Izumi*, Jun-ichi Tanuma*  *責任著者
【doi】10.1016/j.tranon.2021.101236

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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