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超深海の変質したマントル岩石の内部で炭素を含む海水が循環していることを明らかに

2021年12月06日 月曜日 研究成果

発表のポイント

  • 伊豆・小笠原海溝の水深6,400メートルの陸側岩盤を調査・分析した結果、炭素を含む海水が前弧マントル内を数万年以上かけて循環していたことが明らかとなった。
  • 沈み込み帯浅部の前弧マントルは、数万年以上炭素を保持できる炭素貯蔵庫である可能性が示され、深海生命活動との関係解明が期待される。

 

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 松永 是)海域地震火山部門 火山地球内部研究センターの大柳良介 外来研究員および道林克禎 客員研究員は、東北大学、新潟大学、名古屋大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で、伊豆・小笠原海溝の水深6,400メートルの斜面から採取した炭酸塩を含むマントル由来の岩石を解析し、沈み込み帯浅部の炭素循環プロセスを明らかにしました。
地球表層に存在する炭素は、プレートの沈み込みに伴って地球深部まで持ち込まれたのち地表に戻る大循環をしています。最近の研究により、沈み込んだ炭素が比較的浅いところから地表に戻ってくる浅部炭素循環プロセスの重要性が指摘されていましたが、その循環の時間スケールについてはよくわかっていませんでした。
本研究では、伊豆・小笠原海溝の海亀海山(水深6,400メートル)から採取した前弧マントル岩石に含まれる炭酸塩鉱物脈を解析し、炭素安定同位体比(δ13C) が深海水と同様であることと放射性炭素濃度(Δ14C) が低いことがわかりました。これは、炭酸塩が古い海水中の炭素を起源とし、地球内部に運び込まれた海水が、数万年以上の間、プレート上盤の前弧マントル内に滞留したことを示します。また、マントル岩石が破砕され、その流体が数十年以内の短期間で噴出することで炭酸塩が生成したことが明らかになりました。
この成果は、沈み込み帯浅部における炭素循環の新たな知見として、全地球の炭素循環の理解を前進させるものです。また、我が国の排他的経済水域内でマントルの岩石に関連する冷湧水の痕跡が確認された初めての例であり、今後、生命活動との関係の解明も期待されます。
本成果はNature Portfolioの論文誌「Communications Earth & Environment」に12月3日付けで掲載されました。なお、本研究の一部はJSPS科研費(18J01649、19K14827、20KK0079、15H05831、18KK0376、16H06347)によって実施されました。

本学の共同研究者

理学部 マドスーダン サティシュ クマール 教授

研究内容の詳細

超深海の変質したマントル岩石の内部で炭素を含む海水が循環していることを明らかに(PDF:1.1MB)

論文情報

【掲載誌】Communications Earth & Environment
【論文タイトル】Hadal aragonite records venting of stagnant paleoseawater in the hydrated forearc mantle
【著者】Ryosuke Oyanagi, Atsushi Okamoto, Madhusoodhan Satish-Kumar, Masayo Minami, Yumiko Harigane, Katsuyoshi Michibayashi
【doi】10.1038/s43247-021-00317-1

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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