3次元領域における流れの計算機援用証明-数学の未解決問題へ挑む-
ナビエ・ストークス方程式は流体力学の基礎方程式であり、方程式の解の存在と滑らかさ(注1)に関する未解決問題は米国・クレイ数学研究所の「ミレニアム懸賞問題[1]」として、多くの研究者に知られています。この難問に挑むため、従来の解析手法以外に、計算機援用証明(注2)法も有力な方法として検討されています。1990年代、日本の数学研究者・中尾充宏氏は2次元正方形領域における流れの検証に成功して、先駆的な研究成果を挙げました。しかしながら当時の手法では3次元領域における流れの検証は本質的に困難でした。今回、新潟大学理学部の劉雪峰准教授らの研究グループは、3次元領域でのストークス方程式の誤差評価の難題を解決し、世界で初めて一般的な3次元領域における定常流れ(定常解、注3)の検証に成功しました。
[1] Clay Mathematics Institute
本研究成果のポイント
- 一般的な3次元領域におけるナビエ・ストークス方程式の定常解の計算機援用による検証例として、世界初の研究成果です。
- ナビエ・ストークス方程式の境界値問題(注4)に対して、計算機を用いた数値計算方法と厳密な誤差評価理論を提案します。
【用語解説】
(注1)解の滑らかさ:偏微分方程式の場合、弱い意味での解(弱解という)を求め、それがどの程度の連続性や微分可能性をもつかが重要な問題であり、それを解の滑らかさと呼んでいる。
(注2)計算機援用証明:計算機による計算結果を利用した数学的厳密証明のこと。
(注3)定常流れ(定常解):時間的に流れ(解)の様子(速度、圧力、密度など)が変化しない流れである。
(注4)境界値問題:微分方程式の解を、それが定義される領域の境界上の値に制限(境界条件)を付けて求める問題のこと。
研究内容の詳細
3次元領域における流れの計算機援用証明-数学の未解決問題へ挑む-(PDF:541KB)
論文情報
【掲載誌】Communications in Nonlinear Science and Numerical Simulation
【論文タイトル】Computer-assisted proof for the stationary solution existence of the Navier–Stokes equation over 3D domains
【著者】劉雪峰(新潟大学)、中尾充宏(早稲田大学)、大石進一(早稲田大学)
【doi】10.1016/j.cnsns.2021.106223
本件に関するお問い合わせ先
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