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新規の膵臓発がんモデル動物を確立-膵臓選択的な遺伝子導入による効率的なモデル動物-

2022年04月08日 金曜日 研究成果

膵がんは予後が不良で、有効な治療法の開発が喫緊の課題です。しかしこれまで、有用なモデル動物が存在しなかったことが、早期診断のためのマーカーや、治療法の確立が進まなかったことの要因の一つです。今回、新潟大学医学部医学科総合診療学講座/大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の上村顕也特任教授、同分野の柴田理(大学院生)、寺井崇二教授らの研究グループは、これまでに開発してきたハイドロダイナミック遺伝子導入法(注1)によってがん遺伝子などを、膵臓に選択的に導入することで、野生型ラットの膵臓に効率的に発がんさせる方法論を確立しました。

本研究成果のポイント

  • 膵がんは予後が不良で、有効な治療法開発のためのモデル動物の確立が重要です。
  • 本研究グループがこれまでに開発した、膵臓選択的なハイドロダイナミック遺伝子導入法により、野生型ラットで、効率的な膵臓発がんモデルを確立しました。
  • ヒト膵がん関連遺伝子である、KRASG12D遺伝子注2)を導入し、ラットでヒト膵がんに近似する組織構造を持つ膵がんを発生しました。
  • KRASG12Dの遺伝子量やYAP遺伝子注3)など他のがん遺伝子との組み合わせにより、遺伝子導入後、5週間で膵臓での発がんを誘導しました。
  • 肝臓、皮下、リンパ節への転移、神経や周囲臓器への浸潤などヒト膵がんの経過を模倣するモデル動物です。
【用語解説】

注1:ハイドロダイナミック遺伝子導入法
物理的な力(水圧)を利用して、遺伝子を対象臓器の血管から導入して、臓器の細胞で目的とする蛋白を発現させる方法です。著者らはこれまでにこの方法を用いて、肝硬変に対する遺伝子治療法研究や臨床応用するための大動物での検証、肝臓や膵臓など臓器選択的な遺伝子導入法の開発を重ねてきました。(Kamimura K, et al. Mol Ther, 2009; Kamimura K, et al. Mol Ther, 2010; Yokoo T & Kamimura K, et al. Gene Ther, 2013; Kamimura K, et al. Mol Ther Nucleic Acids, 2013; Abe H & Kamimura K, et al. Mol Ther Nucleic Acids, 2016; Kobayashi Y & Kamimura K, et al. Mol Ther Nucleic Acids, 2016; Ogawa K & Kamimura K, et al. Mol Ther Nucleic Acids, 2017)

注2:KRAS遺伝子
がん遺伝子であるrasファミリーの1つで、細胞増殖シグナルを細胞の核に伝達して、細胞増殖を進めます。この遺伝子の変異(例 KRASG12D)ががん化の促進に重要な役割を果たしています。

注3:YAP遺伝子
YAP(yes-associated protein)遺伝子は、ヒトの様々ながんで機能している、がん遺伝子の一つです。転写因子として細胞増殖に関与します。ほかに、器官の大きさの制御や腫瘍の抑制を可能にするHippoシグナル伝達経路によって阻害される、ことが報告されています。

研究内容の詳細

新規の膵臓発がんモデル動物を確立-膵臓選択的な遺伝子導入による効率的なモデル動物-(PDF:1.2MB)

論文情報

【掲載誌】Molecular Therapy – Nucleic Acids
【論文タイトル】Establishment of a Pancreatic Cancer Animal Model using the Pancreas-Targeted Hydrodynamic Gene Delivery Method
【著者】Osamu Shibata, Kenya Kamimura, Yuto Tanaka, Kohei Ogawa, Takashi Owaki, Chiyumi Oda, Shinichi Morita, Atsushi Kimura, Hiroyuki Abe, Satoshi Ikarashi, Kazunao Hayashi, Takeshi Yokoo, Shuji Terai
【doi】10.1016/j.omtn.2022.03.019

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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