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血液中のアンモニア値が上昇すると脳内でのアミロイドβの産生が増加することを発見-アルツハイマー病の新規発症メカニズムの解明-

2022年04月18日 月曜日 研究成果

本学大学院医歯学総合研究科口腔生化学分野の照沼美穂教授らの研究グループは、血液中のアンモニア濃度が上昇すると、脳内の非神経細胞であるグリア細胞の一つ、アストロサイト(注1)でのアミロイド前駆タンパク質(APP)(注2)量が上昇し、アルツハイマー病の特徴である老人斑(注3)の主要な構成成分とされるアミロイドβ42(注4)が増加することを発見しました。本研究成果により、新規のアルツハイマー病発症のメカニズムが提唱され、特効薬が未だにないアルツハイマー病の治療法の開発につながることが期待されます。この研究は、米国・タフツ大学の Stephen J Moss教授と本学大学院医歯学総合研究科高度口腔機能教育研究センターの前田健康教授との共同研究で行われました。本研究成果は4月13日にJournal of Biological Chemistry誌にオンライン版で先行公開されました。

本研究成果のポイント

  • これまで神経細胞が産生することが広く知られていた凝集性の高いアミロイドβ42がアストロサイトでも産生されるメカニズムを発見しました。
  • 血液中のアンモニア値が上昇すると脳内のアストロサイトが炎症反応を呈し、APPの発現量が上昇することがわかりました。
  • アストロサイトの細胞膜に発現するAPPは、アストロサイトがアンモニア刺激を受けると細胞内に入り込み、小胞体(注5)に運搬されて蓄積されることがわかりました。
  • 小胞体に蓄積された APPを元にアストロサイトでアミロイドβ42が産生されることがわかりました。
【用語解説】

(注1)アストロサイト
中枢神経系に存在するグリア細胞。哺乳類の脳の中で最も数が多い。脳内では星状の形状であることからアストロサイトと呼ばれる。

(注2)アミロイド前駆タンパク質
Amyloid precursor protein(APP)のこと。細胞膜に存在するタンパク質であり、その機能は多岐に渡るとされる。セクレターゼと呼ばれるタンパク質分解酵素によって分解され、中でもβセクレターゼとγセクレターゼによって分解された40アミノ酸程度の断片がアミロイドβと呼ばれ、アルツハイマー病の発症に深く関与していると考えられている。

(注3)老人斑
加齢に伴って脳内に観察されるアミロイドβの巨大な凝集体のこと。

(注4)アミロイドβ42
42アミノ酸残基からなるアミロイドβのこと。アミロイドβ40よりもはるかに凝集性が高く、神経毒性が高いと考えられている。

(注5)小胞体
細胞内小器官の一つ。合成されたタンパク質の折りたたみや成熟化などの品質管理、カルシウム貯蔵、脂質の合成などを担う。

研究内容の詳細

血液中のアンモニア値が上昇すると脳内でのアミロイドβの産生が増加することを発見-アルツハイマー病の新規発症メカニズムの解明-(PDF:0.6MB)

論文情報

【掲載誌】Journal of Biological Chemistry
【論文タイトル】Ammonia induces amyloidogenesis in astrocytes by promoting amyloid precursor protein translocation into the endoplasmic reticulum
【著者】Ayaka Komatsu, Izumi Iida, Yusuke Nasu, Genki Ito, Fumiko Harada, Sari Kishikawa, Stephen J Moss, Takeyasu Maeda, Miho Terunuma
【doi】10.1016/j.jbc.2022.101933

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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