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バーチャルリアリティ診療手技訓練コンテンツを開発-臨床実習開始前の教育への活用を期待-

2022年06月15日 水曜日 トピックス

医療の現場では、検査や治療において様々な手技が要求されます。学部教育の段階からそれらの手技に触れておくことは、将来業務として携わる診療における「安全と質」の担保の観点から極めて有効と考えられています。そのため従来から書籍や動画教材だけでなく、シミュレータによる訓練などが行われてきました。そんな中で新型コロナウイルス感染症の蔓延によるリモート環境の普及に伴い、さらなる学習手法の開発が望まれるようになりました。そのためこれまでにも存在していた仮想現実(Virtual Reality:VR)という手技に、一層の期待が寄せられています。医療の分野においても、世界各地で開発が行われております。
この度、本学医学部医学科総合診療学講座の監修の下、イマクリエイト株式会社(本社:東京都品川区、代表者:山本彰洋、川崎仁史)と診療手技※1訓練コンテンツを共同開発しました。ゴーグルを装着することで、VR空間内で手技を行う体験ができます。さらにガイド機能の充実で医学生の自学自習が可能になったことは、実際の訓練よりも優れている点と言えます。納得いくまで繰り返すこともできるので、特に臨床実習※2開始前の医学生への教材として最適です。

ポイント

  • 医療には手技が多く、実体験に基づくトレーニングが必須です。
  • これまでも各自が書籍や動画、シミュレータなどを用いて予習をしていました。
  • 新型コロナウイルス感染症の蔓延で、リモートにおける学習環境の構築が分野に関わらず急務であることの認識が進みました。
  • 安価でどこでも入手できる汎用ゴーグルでの使用を想定して、民間企業と共同で自習目的のコンテンツを開発しました。
  • ガイド機能の充実で、指導者が横にいなくとも実施が可能です。

1.開発の背景

仮想現実の着想は、1930年代を起源としています。古典的には「飛び出す映画」のような、立体視が実用化されています。その後ヘッドマウントディスプレイ(HMD)やグローブのようなデバイスが登場し、コンピュータとともに進化してきました。
一時期停滞していたこれらの手技の開発が、新型コロナウイルス感染症によるリモート環境の普及で注目を集めることになりました。いわゆる「キャズム※3を超えた」状態です。具体的には手頃な価格のデバイスの登場で、誰もが体験できる時代に突入したことになります。

2.開発の概要

  1. イマクリエイト株式会社では、NUPというVRプラットフォームが開発されています。「体の動き」を共有することがコンセプトであり、けん玉・ゴルフ・溶接などのコンテンツが提供されていました。
  2. 医療業界ではこれまでにも教育用だけでなく、手術の計画やDa Vinci(手術支援ロボット)のような場面においてVRが応用されていました。近年ではワクチン接種やECMOのプロトコールを確認する目的でのVRが、注目を集めるようになりました。
  3. NUPにおいては診察や筋肉注射のコンテンツが先行していましたが、この度ラインナップの拡充を図ることとなりました。

キャプチャ動画URL
https://drive.google.com/file/d/1FUfUHvwytYcJ_VAmuSkDdPLOPW9rRZ3A/
(実際はフレームレートが3倍程度あるので、もっと滑らかです)

民生品の汎用VRゴーグルを用いた、医学生による自習の様子
医学生によるデモンストレーション
自習をサポートするガイド機能
今後もメニューを拡充
心電図
心電図の電極を貼付している様子
マンシェットを用いた血圧測定
動脈血の採取では逆血も確認可能
 

3.開発の成果

いわゆるシミュレータの範疇に入るので、人体に侵襲を与えるものではありません。訓練を納得するまで繰り返し行うことができます。針を刺す手技などでより実際に近い感触を得たい場合には、実体型のシミュレータを併用することになります。
ガイド機能を充実させることにより、ゴーグルの装着または基本的な操作ができれば自由に訓練を行うことができます。事前知識が少なくとも学習を進めることができるので、臨床実習前の医学生に最適です。

 4.今後の展開

コンピュータ画像(CG)によるVRだけでなく、実画像を交えたVRの併用も検討しています。手技の練習だけでなく、オリエンテーションや院内ツアー等に活用できます。

用語解説

※1 手技:身体診察や(注射などの)処置ないし検査などの医療行為において要求される技術のこと。
※2 臨床実習:英語の“clinical teaching, bedside training”を訳したもの。いわゆる病院や診療所などの、医療現場で行われる実習のこと。登院実習とも呼ばれる。
※3 キャズム:革新的な技術が現れてから市場に行き渡るまでに存在する溝。アメリカのジェフリー・ムーア氏が提唱。

本ニューストピックスのPDF版

バーチャルリアリティ診療手技訓練コンテンツを開発-臨床実習開始前の教育への活用を期待-(PDF:0.6MB)

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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