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人工透析医療の合併症「透析アミロイドーシス」に新リスク因子を発見-血中の血清アルブミンを高濃度に保つことがアミロイドーシス予防のカギ-

2022年10月04日 火曜日 研究成果

研究成果のポイント

  • 人工透析医療により血中の血清アルブミンが減少することで、人工透析患者特有の透析アミロイドーシスの原因であるβ2-ミクログロブリンのアミロイド線維が形成されやすくなることを明らかにしました。
  • 2021年、日本で約35万人が慢性腎不全の治療のために人工透析を受けています。15年以上透析治療を受けた透析患者の約10人に1人が透析アミロイドーシスを発症します。しかしながら、どの患者がこの病気を発症しやすいかを予測することはできませんでした。
  • 新たな関連因子を発見したことにより、人工透析患者のアミロイドーシスを予防し、人工透析医療のさらなる発展に貢献することが期待できます。

概要

大阪大学国際医工情報センターの後藤祐児特任教授(現・大学院工学研究科、特任研究員)・中島吉太郎特任研究員(常勤)(現・大学院工学研究科、特任助教(常勤))、新潟大学医歯学総合病院の山本卓准教授らの研究グループは、新潟薬科大学、福井大学と共同で、人工透析医療の合併症である透析アミロイドーシスと呼ばれるアミロイドーシスの発症機構を蛋白質科学の手法で研究しました。
透析アミロイドーシスは、人工透析を受ける患者に特有の病気であり、透析治療を長期間にわたり受けた患者に発症する合併症です。これまでの研究から、β2-ミクログロブリンと呼ばれる蛋白質のアミロイド線維がこの病気の原因であることが明らかになっていましたが、どの患者が体内でアミロイド線維ができやすく、この病気が発症しやすいかを予測することはできませんでした。
今回、後藤特任教授らの研究グループは、独自開発したアミロイド誘導装置(HANABI-2000)により、透析患者等から採取した100検体以上の血清を用いた実験を行い、血中の血清アルブミンの量が減少することで、β2-ミクログロブリンのアミロイド線維が形成されやすくなることを解明しました。これまで、人工透析を受ける患者の体内で血清アルブミンの量が減少することは知られていましたが、これが透析アミロイドーシスの発症機構に関連すると考えられたことはありませんでした。新たな関連因子の発見により、人工透析を受ける患者の合併症を予防し、透析医療のさらなる発展に貢献することが期待されます。
本研究成果は、Nature Researchが提供するオープンアクセス・ジャーナルNature Communicationsに、2022年10月3日(月)18時(日本時間)に公開されました。

研究内容の詳細

人工透析医療の合併症「透析アミロイドーシス」に新リスク因子を発見-血中の血清アルブミンを高濃度に保つことがアミロイドーシス予防のカギ-(PDF:1MB)

論文情報

【掲載誌】Nature Communications
【論文タイトル】Macromolecular crowding and supersaturation protect hemodialysis patients from the onset of dialysis-related amyloidosis(高分子混み合い効果と過飽和が血液透析患者を透析アミロイドーシスの発症から保護する)
【著者】Kichitaro Nakajima, Keiichi Yamaguchi, Masahiro Noji, Cesar Aguirre, Kensuke Ikenaka, Hideki Mochizuki, Lianjie Zhou, Hirotsugu Ogi, Toru Ito, Ichiei Narita, Fumitake Gejyo, Hironobu Naiki, Suguru Yamamoto, and Yuji Goto(中島吉太郎、山口圭一、野地真広、Cesar Aguirre、池中建介、望月秀樹、Lianjie Zhou、荻博次、伊藤徹、成田一衛、下條文武、内木宏延、山本卓、後藤祐児)
【doi】10.1038/s41467-022-33247-3

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

 

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