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遺伝子発現変化に基づくドラッグリポジショニングにより、既存薬の肝硬変に対する治療効果を発見

2022年10月28日 金曜日 研究成果

肝硬変は世界中で広く見られる疾患で、毎年約100万人が肝硬変のために命を落としているといわれています。ウイルス性肝疾患や、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎など様々な要因で肝臓の線維化が進行して肝機能が低下する病態で、有効な治療法の開発が喫緊の課題です。
今回、新潟大学医学部医学科総合診療学講座/大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の上村顕也特任教授、同分野の酒井規裕特任助教、寺井崇二教授、長崎大学病院薬剤部の大山要教授、同大学生命医科学域薬剤学分野の宮元敬天助教、同実践薬学分野の中嶋幹郎教授らの研究グループは、遺伝子発現変化(注1)に基づくドラッグリポジショニング(注2)の手法により、乳癌の治療などに使用されているレトロゾール(注3)に、肝線維化の進行を抑制する効果があることをマウスで明らかにしました。

本研究成果のポイント

  • 肝硬変は様々な要因で肝臓の線維化が進行する病態で、決定的な治療法がありません。
  • ヒト肝細胞キメラマウス(注4)を用いて、36種類の国内承認薬をスクリーニングし、レトロゾールが肝線維化関連遺伝子の発現を抑制することを明らかにしました。
  • この結果に基づいて、様々な肝線維化モデルマウスにレトロゾールを投与したところ、肝線維化の進展抑制効果を示しました。
  • レトロゾールが、肝細胞の中のHsd17b13遺伝子の発現制御を介して、肝線維化関連遺伝子の活性化を抑制することを明らかにしました。
【用語解説】

注1:遺伝子発現変化
遺伝子の情報に基づいて蛋白質が合成され、細胞における構造や機能に変換される過程を遺伝子発現といい、その変化のことです。
注2:ドラッグリポジショニング
安全性や体内動態が確認されている既承認薬について、新たな薬効を見いだし、別の疾患に対する治療薬として開発する方法です。
注3:レトロゾール
アロマターゼ阻害薬の一種で、乳癌などの治療に用いられる薬剤です。
注4:ヒト肝細胞キメラマウス
肝臓の多くがヒト肝細胞で構成された特殊なマウスです。本試験では、80%以上がヒト肝細胞で置換されたマウスを使用しています。

研究内容の詳細

遺伝子発現変化に基づくドラッグリポジショニングにより、既存薬の肝硬変に対する治療効果を発見(PDF:1.0MB)

論文情報

【掲載誌】Journal of Gastroenterology
【論文タイトル】Letrozole ameliorates liver fibrosis through the inhibition of the CTGF pathway and 17β-hydroxysteroid dehydrogenase 13 expression
【著者】Norihiro Sakai, Kenya Kamimura, Hirotaka Miyamoto, Masayoshi Ko, Takuro Nagoya,  Toru Setsu, Akira Sakamaki, Takeshi Yokoo, Hiroteru Kamimura, Hiroyuki Soki, Ayako Tokunaga, Tatsuo Inamine, Mikiro Nakashima, Hatsune Enomoto, Kazuki Kousaka, Hidehisa Tachiki, Kaname Ohyama, and Shuji Terai
【doi】10.1007/s00535-022-01929-w

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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