ガーナ共和国ホワイトボルタ川における河川氾濫の擬似温暖化実験-衛星画像を用いて汎用性の高いモデリング手法を構築-
近年、気候変動の進行に伴う流域災害の激甚化が懸念されています。本学大学院自然科学研究科の高山遼太(博士前期課程大学院生)、本学自然科学系(工学部)の中村亮太准教授、早稲田大学理工学術院総合研究所のMiguel Esteban教授、横浜国立大学都市科学部都市基盤学科のMartin Mäll助教、本学大学院自然科学研究科博士前期課程修了生の大泉洸太氏の研究グループは、数値計算モデルとSAR衛星画像から判定した浸水範囲を用いてガーナ共和国(以下、「ガーナ」)ホワイトボルタ川で2020年に発生した洪水を再現しました。そして、温暖化後の環境下においてガーナ北東地域の降雨量、河川流量、氾濫による浸水面積の変化を予測しました。予測された浸水域はSAR画像と良好に合致し、河川流量の定点観測値が取得できない地域を対象とした河川流域氾濫の研究が行えることを示しました。また、SSP5-8.5シナリオに基づく気象条件下では、大気温度及び相対湿度の上昇によって平均降雨強度が増加する可能性があることが算定されました。これらの結果に関連して、河川流量及び浸水面積が増大することによりガーナ北東地域で温暖化を想定した将来において洪水強度が増加する可能性があることが示唆されました。
本研究成果のポイント
- 数値計算モデルを用いてガーナ北東地域で洪水がより深刻化する可能性を示した
- 衛星画像を用いて世界各地に適用可能な汎用性の高いモデリング手法を構築した
【用語解説】
擬似温暖化実験:領域的な気象場に全球気象モデルの温暖化後と現在気候の物理変数の差異を加算することで、過去の気象現象を擬似的に温暖化させてシミュレーションする手法のこと
SAR衛星画像:衛星からマイクロ波を発射して、雲などの影響を受けずに地球表面を観測した画像のこと
SSP5-8.5シナリオ:気候変動に関する政府間パネル第6次評価報告書における気候政策がない最も温暖化が進行するとするシナリオのこと
研究内容の詳細
ガーナ共和国ホワイトボルタ川における河川氾濫の擬似温暖化実験-衛星画像を用いて汎用性の高いモデリング手法を構築-(PDF:0.7MB)
論文情報
【掲載誌】Journal of Hydrology: Regional Studies
【論文タイトル】Pseudo global warming experiment of flood inundation in the upper White Volta River, Ghana
【著者】Ryota Takayama, Ryota Nakamura, Miguel Esteban, Martin Mäll, Kota Ohizumi
【doi】10.1016/j.ejrh.2022.101297
本件に関するお問い合わせ先
広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
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