世界初、シロアリの「ロイヤルフード」の採取とその成分分析に成功-王と女王の長寿を支える食と代謝の理解に光明-
本学自然科学系(理学部)の田﨑英祐助教は、テキサスA&M大学の三高雄希博士研究員(日本学術振興会海外特別研究員)、浜松医科大学国際マスイメージングセンターの瀬藤光利教授、京都大学大学院農学研究科の松浦健二教授らの研究グループと共同で、シロアリの王と女王の特別な食べ物「ロイヤルフード」の採取とその分析に世界で初めて成功し、アセチル-L-カルニチンなど複数の機能性候補分子の存在を明らかにしました。これは、シロアリの王と女王が実現する活動的長寿(注1)の背後にある複雑な長寿代謝機構の解明への道を拓いたものです。本研究の成果は、生物の老化・寿命を制御する代謝機構の理解を深めるだけでなく、我々ヒトの健康寿命の延伸に関する医学・健康科学分野の研究開発においても端緒となることが期待できます。
本研究成果は、2023年7月4日に国際学術誌「PNAS Nexus」にオンライン掲載されました。
本研究成果のポイント
- シロアリの王と女王は、働きアリから口移しでロイヤルフードを受け取っていることを明らかにした。
- 微量なロイヤルフードの採取と分析に成功し、複数の機能性候補分子を同定した。
- 働きアリの採餌したセルロースからロイヤルフードが作られ、王と女王へ移動するというコロニー(巣)内の個体間代謝経路の存在を明らかにした。
【用語解説】
(注1)活動的長寿:高い活動性と長寿命を両立すること。
研究内容の詳細
世界初、シロアリの「ロイヤルフード」の採取とその成分分析に成功-王と女王の長寿を支える食と代謝の理解に光明-(PDF:1.0MB)
論文情報
【掲載誌】PNAS Nexus
【論文タイトル】The royal food of termites shows king and queen specificity
【著者】Eisuke Tasaki, Yuki Mitaka, Yutaka Takahashi, A. S. M. Waliullah, Zinat Tamannaa, Takumi Sakamoto, Ariful Islam, Masaki Kamiya, Tomohito Sato, Shuhei Aramaki, Kenji Kikushima, Makoto Horikawa, Katsumasa Nakamura, Tomoaki Kahyo, Mamoru Takata, Mitsutoshi Setou, Kenji Matsuura
【doi】10.1093/pnasnexus/pgad222
本件に関するお問い合わせ先
広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
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