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頭蓋底における組織非特異的アルカリホスファターゼの新しいメカニズムを解明-無機リン酸とピロリン酸による細胞シグナル伝達-

2023年10月30日 月曜日 研究成果

本学医歯学総合病院歯の診療科の大倉直人助教(研究当時:ミシガン大学歯学部小児矯正歯科Nan Hatch教授研究室・博士研究員)らの研究グループは、頭蓋神経堤細胞(注1)でのみ組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP、注2)が欠損するマウスを用いて、免疫組織学的解析の他に頭蓋底の器官培養を行い、無機リン酸塩とピロリン酸塩が蝶形骨間軟骨結合(ISS、注3)における細胞シグナル伝達と表現系変化に特異的な影響を与えることを明らかにしました。成長板軟骨細胞におけるTNAP発現は頭蓋底の正常な発達に不可欠であり、そのメカニズムはピロリン酸塩だけでなくSox9、PTHrPやIHH(注4)といったタンパクへ関与している可能性が高いことを確認しました。本研究成果は、2023年10月20日、科学誌「International Journal of Molecular Sciences」のオンライン版に掲載されました。

本研究成果のポイント

  • 頭蓋神経堤細胞でのみ組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を欠損させたマウスでは、軟骨細胞の増殖、成熟およびアポトーシス(注5)に異常を示す。
  • TNAPを欠損させたマウスでは、蝶形骨間軟骨結合(ISS)でのSox9、PTHrPやIHHのシグナル伝達にも影響を及ぼす。
  • TNAPが頭蓋神経堤細胞の分化や幹細胞性に関与しており、神経堤細胞におけるTNAPの細胞自律的な役割を確認した。
【用語解説】

(注1)頭蓋神経堤細胞
頭蓋の大部分を構成し、成長に伴い最終的に歯、軟骨、頭蓋顔面骨および結合組織を形成する。

(注2)組織非特異的アルカリホスファターゼ(Tissue non-specific alkaline phosphatase: TNAP)
無機ピロリン酸を加水分解して無機リン酸に変換する酵素。TNAPの活性は骨の無機化を促進。
*無機ピロリン酸・・・マトリックスの無機化を阻害。無機リン酸・・・ハイドロキシアパタイト形成の基質。

(注3)蝶形骨間軟骨結合(ISS)
頭蓋底の成長部位の1つで、出生時に成長が終わる。ISSは、蝶形骨と後頭骨底部をつなぐ軟骨結合。図を参照。


図.マウスの頭蓋に対するnanoCT解析
ISS: 蝶形骨間軟骨結合、SOS: 蝶形後頭軟骨結合
バーは200µm。

(注4)Sox9、PTHrP、IHH
軟骨形成時に関与する転写因子、あるいは間葉系幹細胞から分泌される因子。

(注5)アポトーシス
個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされるプログラムされた細胞死のこと。

研究内容の詳細

頭蓋底における組織非特異的アルカリホスファターゼの新しいメカニズムを解明-無機リン酸とピロリン酸による細胞シグナル伝達-(PDF:1.0MB)

論文情報

【掲載誌】International Journal of Molecular Sciences
【論文タイトル】Cranial Neural Crest Specific Deletion of Alpl(TNAP)via P0-Cre Causes Abnormal Chondrocyte Maturation and Deficient Cranial Base Growth
【著者】Naoto Ohkura, Hwa Kyung Nam1, Fei Liu, Nan Hatch
【doi】10.3390/ijms242015401

本件に関するお問い合わせ先

広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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